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あなたの言いたいこと

Vol.198/2014/07


「日本人男子」


 よく「英語を身に付けたいから、ワーホリでオーストラリアに来た」とか言うけど、そんな簡単に英語がしゃべれるようになれれば、英語がしゃべれる日本人は世界中にもっといるはずです。いないんだから、無理なんだと思います。その点、俺は「オージーの彼女を見つけるため」にオーストラリアに来ました。

 だけど、英語が話せなきゃ、オージーの女の子とも話はできないし、付き合うどころか飯も一緒に食いにいけない。そんなことを思っていた時、日本人の友だちから「今日、うちで飲まない?オージーのシェアメートも一緒だけど」といった誘いを受けました。その夜は別にやることもないし、ひとつ返事で「行くよ」と言って、自転車をこいでその友だちの家へ行きました。

 すると、オージーのシェアメートは女の子で、その女の子の友だちもいて、4人で飲み始めました。英語がダメな俺は、「イエス」「ノー」だけを適当に言いながら、ビールをひたすら飲み続けましたが、自分がオーストラリアに来た目的は“オージーの彼女を作ること”だったこと思い出し、ちょっとしたチャレンジをしてみました。

 それは、とにかく人の話は聞かずに、自分の言いたいことを言い続けることでした。実際、彼女達が何を言っているのかわからないんだから、勝手だけど言いたいことだけ言い続ければいいんだ、とある種の開き直りでした。

 当然、彼女達は俺の言ったことに言葉を返してきましたが、その言葉の意味もわからないから、無視して、とにかくしゃべり続けました。すると、彼女達は俺の訳のわからない英語に相槌を打ちながら、真剣に聞き始めたんです。最初の俺の「イエス」「ノー」が、今度は彼女達が「イエス」「ノー」だけになったんです。

 奇跡でした。日本人の友だちも、俺に感心してました。俺の英語は中学生レベルで、単語はそれ以下。でも、言いたいことは伝わったんでしょう。文法だの発音だの、ごちゃごちゃ言っている人もいますが、本当にしゃべりたいとか、伝えたいことをもっていれば、言葉は理解されるんだと思いました。

ちなみに、その時の彼女のひとりは、今の俺のかみさんです。その時の伝えたかったことは、“日本人男子の魅力”でした。

<投稿者>マサ 38歳 男性



「世界を知らない」


 飲食店で、マネージャーをしています。多いときは週に5人は面接をしています。その面接で最近感じることですが、とにかく「自分を大きく見せる」人が、多いということです。求人募集で来ている人なので、職を得るためなら“自分を売り込む”のは当たり前ですが、それにしても誇張が大き過ぎます。例えば、この間も「キッチンハンド以外にカスタマーサービスはできますか?」と聞くと、「前の職場ではマネージャーだったので、一通りできます」と。それを聞いてしまうと、こっちとしては“キッチンハンド以外にもっと幅広く、仕事をこなせるんだ”と思うのです。 しかし、実践させると、首を傾げたくなる人が多いと思います。1人や2人なら、こんなことは言いません。結構な割合で、そうなることがあります。実際にその子も、お客さんへの対応、料理のサーブの仕方、お皿の下げ方、ぐちゃぐちゃでした。「カスタマーサービスをしていたことがあると言ってましたよね?」と聞くと「はい。ただ、そこまで…」と言い訳がましいことをそれっぽい理屈と並べて言っていました。

 ならば、仕事以外はどうなのかというと…。実はその子、休憩室での会話も“自分を大きく”言っていたのです。「サーフィンするんだよね。日本では、よく××に行っていた」と言うので、休みの日に他のスタッフと一緒にサーフィンをしに行ったのです。しかし、目を覆う有様でした。上手い、下手はどうでもいいんですが、とにかく慣れていない感じで、日本で本当にやっていたのか?と疑ってしまうほどでした。極めつけは「日本と波の質が違う」と。自分も20年ほどサーフィンをしていますが、彼女は誰が見ても“初心者”ではなく“未経験者”でした。

 そんな彼女ですが、仕事や私生活でも自分のことをなぜそこまで「大きく言ってしまうのか」と考えてみると、実は本人は悪気がなさそうです。つまり、彼女の生い立ちや今までの生活圏内では、それが最高位で、そのマックスに到達している自分がいるのは、事実なんです。なので、過大評価ではなく、全てが彼女にとって事実なんだと思います。

 自分の知っているカスタマーサービスはそれで、それができるから、できると言っているだけで、それ以上のカスタマーサービスは知らないんだと思います。サーフィンも、やっていたのは事実ですが、例えばマナーや技術には興味がなかったんでしょう。

 ただ、一言で言えば、「世界を知らないな」と思います。上には上がいることを知らないんだと思います。知っていたとしても、目にも映らないし、頭にも入ってこないのでしょう。そういう教育を受けてきたのかもしれません。しかし、世界に出て、そのスタンスで人と会い、仕事をこなし、恋愛をするとなると、間違いなく自分の価値を下げることになるでしょう。

 世界はとっても大きいです。「自分を大きく見せる」前にその大きさを計ってみてほしいです。恐らく、米粒サイズだと思います。世の中には知らないことだらけでしょうし、物事には浅いも深いも、低いも高いも、もっとあります。せっかく両親からこの世に生を受け、生きているのだから、“世界を視野に入れて生きてほしい”と感じる今日この頃です。

<投稿者>久田 44歳 男性