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第24回 パースパノラマパズル リレー小説


 

【前回までのあらすじ】
沢田百々子、45歳。百々子はサンフランシスコで病院を退院する日、恩田正平に連れ去られた。恩田はパースで百々子へストーカー行為をはたらき、逮捕歴がある。

 


 
第32走者
迷い人
 
恩田正平の気力ない右手はハンドルの上に置かれ、頭はサイド・ウィンドウへしな垂れていた。視点は定まっていない。髪は整えられていたが、数日剃っていないだけの無精ひげは不潔さを感じさせなかった。毛玉のついたセーターに脂で色がくすんだジーパンは、身なりに無神経というより、周りへ寂しさ印象づける。シーパンの丈が少し長いのか、裾が解れていた。首元からはインナーのTシャツが見えるが、セーターとのコントラストが強いのでやたら目立った。
 
助手席のRisaは、上下ともにスウェット。上はパーカーでブランド名が左胸に刺繍してあった。膝の上には黒のリュックサックが置かれている。大して荷物が入っていないようだ。
 
静まり返った車の中で正平はぽつり、ぽつりと話始めた。
 
「百々子、覚えているかい、僕らが最初に出会った場所を」
「この先のナイトクラブだったね」
「君は失恋して、そのショックをお酒で流そうとしていた」
「毎晩飲み歩き、ナイトクラブで踊っていた」
「見ず知らずの男に抱かれ、失恋を癒そうともしていた」
「そこに、僕が現れた」
「君は僕の助けで、少しづつ普通の生活に戻っていった」
「僕との生活は、君にとって最高の時間だった」
「なのに、君はパースへ旅立った」
 
間隔を開けながら時間を掛け、ゆっくり話す正平だったが、全てが作り話だった。口に押し込められたハンカチに唾液が染み込むのを感じながら、百々子は正平へ同情すら感じていた。
 
助手席のRisaはサイドミラーの方に顔を傾け、ガラス越しに見えない暗闇を力なく見ていた。黒いバックを握りしめながら…。
 
 


 

第32走者へ続く

 
 
 

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件名 『リレー小説』係

 
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