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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.235/2017/08

第37回「AリーグとJリーグの道筋」


  

 当寄稿ですが、筆者の戯言の延長で実現した本誌連載も三周年を迎えることができました。毎度毎度、筆者の遅筆で十分な推敲が叶わず、稚拙な文章を披露してしまっているわけですが、この連載を通じてオーストラリアのAリーグと日本のJリーグにおける様々な共通点や相違点が改めて気づかされました。


 オーストラリアと日本の建国の歴史は、近代から現在まで欧米の白人系文化に強い影響を受けていますが、サッカーについても欧州から絶大な影響を両国は受けてきました。ただし、日本が他人種に対し閉鎖的であったのに対し、オーストラリアはオープンでしたので、これは結果的に両国のサッカー発展のスピードに重要な違いをもたらしたと思いますが…。


 「サッカーがスポーツの全てではない」といったサッカー以外の国を代表するプロスポーツが、両国には存在していました。日本は、アジアの中では韓国に次いで早々にプロサッカーリーグを創設しましたが、創設当時のJリーグは本場ヨーロッパのリーグに追い付き追い越せの勢いがあり、それは凄いパワーでした (特に経済的なパワーでしたが)。ただし、プロ野球のように永続的に興行を成り立たせるのに懐疑的な見方があったことも事実です。実際、バブル期に親会社が身の丈に合わない経営をしてしまった結果、クラブの消滅、破産等の経験もしています。


 一方、オーストラリアもラグビーという国を挙げたスポーツがあり、Aリーグがプロ興行を成り立たせるのに苦労を重ねましたが、サッカー新興国としてプロリーグの創設から発展期を手本にするヨーロッパのリーグがあったので、後発ゆえの優位さがあったと思います。アメリカのメジャースポーツも参考にして、特にサラリーキャップ制は他リーグが苦労している人件費の高騰にうまく抑止力として機能していると思います。 “リーグの経済的な健全性”という点では、後発ゆえにAリーグは守られていると言えるでしょう。


 クラブのあり方についても違いがあると思います。元々、Jクラブの前身が企業クラブだったことも要因ですが、地域密着が浸透するのにかなりの時間を要しました。リーグ創設から10年を過ぎたあたりでようやく浸透させた日本に比べ、創設当初のAリーグは「地域密着」をより早く浸透させ、地域密着性は高いと思います。また、リーグの熟成度についても相違がありますが、Jリーグは現在、発展期から成熟期を迎えており、極端な右肩上がりの成長はもう見込めませんが、Aリーグはまだ発展期であり、成長が見込めるでしょう。 ただし、Jリーグよりも早く成熟期を迎えているとも言えます。


さて、ここで恒例の質問です。



【Q】上記の共通点や相違点を踏まえて、今後両リーグにとって何が最優先課題となるでしょうか?

【A】サッカーを“文化として根付かせること”でしょう。

  経済的な課題として、興行を成り立たせるための観客の確保が目先の課題として優先すべきなのは事実ですが、現在のサッカーファンの次の世代が同じようなサッカーファンとして育つサイクルを作る必要があります。今の若者が、将来家族を持った時のことを想定して、啓蒙をもっとすべきです。結果、継続して興行を成り立たせることが可能になるわけですので。

 また、週に1、2試合程度をスタジアムもしくはテレビ等で観ることが当たり前な空気を作るべきです。これはマスコミとうまく手を組み、国民にコミットしていくしか方法はありません。語弊がありますが “洗脳”していくべきです。極論では、無料で試合を観ることのできる環境も必要だと考えます。

 オーストラリアも日本もサッカーは、国を代表するスポーツにはなれませんが、徐々にそれに準ずる存在になりつつあると思います。サッカーが“文化”の一つとして非日常ではなく、日常的に生活に寄り添うことになれば言うことはないでしょう。

 さて、今回は過去3年分の36回を振り返り、オーストラリアのAリーグと日本のJリーグの共通・相違点で話を進め、それらの点を踏まえて両リーグが進むべき方向が何か提案してみました。また、来月以降もご愛読、宜しくお願いします。