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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.233/2017/06

第35回「オーストラリアと日本の集客方法」


  Aリーグはオフシーズンで、ACLも敗退してしまったAリーグ勢はストーブリーグ真っ只中ですが、こちらへは目立った移籍情報は今のところ届いていません。活気のある移籍市場を期待しています。日本は、Jリーグがシーズン真っ最中で、ACLも2チームが準々決勝に進出しており、健闘を期待しています。さて、今号も恒例の質問です。

【Q】リーグ戦でもカップ戦でも、各クラブが“いかに集客するか”が永年の課題となっていますが、両リーグは集客のためにどのような工夫をしているでしょうか?

【A】スタジアムでの催し物で客寄せを行っています。両リーグがそれぞれ、どのような工夫を凝らしているか紹介します。

 

  まず、集客において固定客の確保は絶対条件です。シーズンチケットがどれだけ捌けたかによって固定客がどのぐらいいるのか把握できますが、平均観客数が横這いか、微減している両リーグはシーズンチケットホルダー以外の集客が重要な課題となっています。

 では、なぜ観客数が伸び悩んでいるのか?つまり、シーズンチケットホルダー以外の観客数が伸び悩んでいる理由は何なのか、考えてみました。以下のような理由が挙げられるでしょう。
・お金を払ってでも観たい選手がいない。
・スタジアムまでのアクセスが不便。
・チケットの値段が高い。
・ひとりで見に行くのは嫌だ。他に一緒に観に行く人がいない。
・試合が行われる時間帯が自分の時間と合わない。
・観戦に行った人だけが味わえる特別感が少ない。

 それでは、その状況を踏まえて、両リーグがどのような工夫を行っているか紹介します。
 最初にJリーグでは、スタジアム周辺やスタジアム内に出店している屋台で、スタジアムグルメ「スタグル」と言われるその地域名産の料理が販売され、アウェイから訪れたサポーター達も楽しめるようになっています。ホームチームのスタジアムで相手チームの地元名物をあえて食べてみたりとなかなか面白い催しが自然と広まり、それを目当てに各スタジアムに訪れている人もいるようです。インターネット上で検索をしてみるとランキングなどもあり、スタジアムを訪れた際の楽しみの一つになっているようです。

 一方、オーストラリアのスタジアムで筆者が驚いたのが、スタジアム内にスポーツベット、いわゆる「サッカー賭博」ができるスタジアムがあるということです。試合途中でも賭けることができるようで、鉄火場な状態が目に浮かびます。これは、Aリーグにおける集客方法の工夫ではありませんが、この賭博が人を呼び寄せる方法として更にメジャーになれば即効性がありそうです。将来の希望的観測で、この賭博を工夫することで集客につなげられるのではないかと筆者は考えました。日本では考えられない環境ですが…(笑)。

 その他にも各スタジアムでは、スタジアム外で様々な催し物が開催されていますが、それ以前にスタジアム周辺の環境がまだまだ整備されていない地域が多くあります。両リーグともに言えることでですが、サッカーの試合がない日は人が集まらない環境のスタジアムが多く、スタジアムを中心としたエンターテイメント環境を整備することが今後期待されます。また、伸び悩みの理由の一つである「観戦に行った人だけが味わうことのできる特別感」をどのように演出するかも重要になるでしょう。例えば、スタジアム全体で応援ができるような演出をスタジアムの仕切りで行うのも面白いと思います。“非日常感”が味わえるということが大切になるでしょう。

 AリーグもJリーグもプロサッカーを観る環境は、かつてに比べれば格段に良くなりました。サッカー専用(陸上トラックがない)スタジアムも整備され、徐々にスタジアム周辺の環境も整ってきているとは思います。ただ、特に日本ではプロ野球場に比べるとまだまだエンターテイメント施設としての魅力は敵っていません。頻繁にスタジアムを訪れていない立場の筆者が偉そうなことを書きましたが、以前、家族4人でスタジアムに行った際の率直な感想を合わせて“戯言”らせていただきました。私たち以外にも退屈そうにしている家族の姿を見たので…。