Vol.230/2017/03
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2017シーズンのJリーグが開幕しました。高額な賞金が設定され、クラブも新たなモチベーションを得て、活気のあるオフシーズンから開幕を迎えられたことでしょう。さて、今回は両国のプロサッカーリーグ、AリーグとJリーグの“未来”についてお届けします。では、恒例の質問です。
【Q】AリーグとJリーグのスタジアムでの観客数は、これからどう変化すると思われますか?
【A】両リーグとも減少すると考えられます。両リーグの経済的な規模拡大は可能性的にありますが、スタジアムへ観戦に行くスタイルの維持は今後、難しいかもしれません。
一つ目の理由として、日本は前例のない人口減少、両国においても高齢化社会を迎えている現状で、観客数を伸ばしていくのは容易なことではないでしょう。
特に、Jリーグです。現在、各都道府県に53のクラブが存在し、その各クラブの観客平均年齢は、2015年時点で41.1歳となっています。対昨で、0.4歳アップしています。この平均年齢は、Jリーグが開幕した1993年に20歳前後だった人達が初のプロリーグに夢中になり、そのままリピーターになっていることが予想されます。実際、開幕当時は観客の平均年齢は20歳台だったので、そのまま年を重ねた年齢層が観客となっていると言えます。一方、観戦に来ている年齢分布のデータを見てみると、18歳以下の若年層は全体の5〜7%で、19歳から22歳も5〜6%と、この世代が次の平均年齢世代になったときのことを考えると、観客減は容易に予想できるでしょう。
2つ目の理由として、先月号でも話題にしたストリーミング配信によって携帯端末等を通じて、どこでもフルの試合観戦ができるようになったことも、スタジアム離れが進むことに拍車をかけるでしょう。
来場している約半分の人がシーズンチケット保持者だというデータがあります。シーズンチケットホルダーは、当然多くの試合を観た方が得なわけで、1シーズン平均で12試合程度スタジアムに観戦に行くようですが、筆者も含めたいわゆるライト層のシーズンチケットを持たない人は、1シーズンに1試合スタジアムに足を運べばマシな方で、わざわざスタジアムに観に行かなくても、テレビ等で観戦すれば…、と考えています。
では、Aリーグはどうでしょう?現在10クラブでリーグが運営され、今後14〜16クラブに増やす計画があるそうです。しかし、スタジアム観戦人数は、2014−15シーズンの一試合あたり平均12,514人、2015−16シーズンが平均12,302人と微減しています。ヨーロッパのメジャーリーグに比べればまだまだ歴史も浅いため、サッカー観戦予備軍が草の根で増えていることは予想できますが、日本と同様、スタジアムに行かずになんらかの方法(テレビや携帯端末等)で試合を観る人が増えていることは確実でしょう。
また、オーストラリアは、日本の人口の約1/5で、まずスタジアムに足を運ぶ人数の分母が、日本とは異なります。分母が劇的に増えない限り、クラブを増やしたとしてもスタジアム観戦者を増やすことは難しいでしょう。
さて、先月号でも触れた放映権などでプロリーグの経済的な繁栄を将来的に可能にするのかもしれませんが、スタジアムでの集客が減退することで、本題の“未来”は決して明るいものではありません。そのスタジアムでプレーする選手のモチベーションは上がらず、高いレベルでのパフォーマンスも生まれ難くなります。
世界的に見て、スタジアムの雰囲気が良いと言われているのが、ドイツとイングランドです。両国ともほぼ満員のスタジアムで、良い雰囲気の中で試合が行われ、観客にとってサッカーはスタジアムで観るものだという意識が根付いているように思います。オーストラリアも日本も、将来のスタジアム観戦者を“育てる”ことが必要となるでしょう。育てる手段はいろいろとあると思います。スタジアム観戦経験者以外の人達を無料で招待してみたり、若年層にもっと興味を持ってもらうためにスタジアム観戦がお洒落で流行であるかのような戦略(かつての日本はJリーグ創成期に確実にその様なマスコミ報道がされていた時代がありました)にてファッション誌やテレビ放送にて取り上げたりも必要となるでしょう。
プロクラブが永続するための経済的な基盤が、入場料収入から放映権料にシフトしつつあり、今後プロクラブの経営面は安定するかもしれません。しかし、いくらスタジアムでの集客減による入場料収入の減収が、放映権料増収でカバーしたとしても、観客のいないスタジアムでは選手のモチベーションも下がり、プレーの質の低下も否めません。よって、スタジアムへの集客は、両リーグの“未来”にとってとても大切なことです。スタジアムでの醸し出す雰囲気は、満員の観客がいてこそです。そのスタジアムを作るのが観客なわけで、スタジアムで試合を観戦するスタイルを定着させない限り、リーグの発展はないといっても過言ではないでしょう。
筆者個人としても、両国リーグが安全かつ盛り上がるスタジアムを今後も維持し続け、スタジアム全体で盛り上がる試合をいつまでも観たいと強く願っています。それが、両リーグの“未来”の発展につながるでしょう。