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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.225/2016/10

第27回「オーストラリアと日本の監督選考 」


 オーストラリア代表と日本代表が10月11日に対戦します。本稿の入稿時期の都合、試合結果はわかりませんが、どちらにとっても良い試合だったと言えていればと期待しています。さて、対戦を済ませた両国において、代表監督の置かれている立場には大きな違いがありそうです。オーストラリアのアンジェ・ポステコグルー監督は、協会やサポーターから信頼を得ているようですし、更迭などの噂は聞こえてきません。それに対して日本のヴァヒド・ハリルホジッチ監督はオーストラリア代表戦前に迎えたイラク代表との対戦結果如何によっては、更迭されるのではとの報道もされていました。そこで、問題です。

【Q】両国代表に関わらず、監督選考の際、必要だと思われる監督の
資質は何だと思いますか?

【A】当然、多岐に渡たりますが、一番重要なのは選手達を上手く
“のせること”ができるモチベーターとしての役割だと筆者は考えます。

 オーストラリアも日本も様々なタイプの監督が、代表やクラブを指揮してきました。筆者が考えている大まかな監督のタイプは、
1. 厳格で規律を重んじ、トップダウン方式を摂るタイプ。
2. 選手達の自主性かつ会話を重んじ、比較的アットホームな雰囲気を作るタイプ。
に別れると思います。

 傾向としては、その国に今までなかった本場のサッカー哲学を普及させようと努めた外国人監督は、1のタイプが強く、普及後は2のタイプの監督がチームをまとめるといった繰り返しの歴史があります。

 代表監督人事では、両国とも外国人監督を招聘してきた歴史があり、選手と監督の間にはアットホームな雰囲気を醸し出し難く、どちらかと言えば1のタイプの監督が多かったと思います。選手達との関係をドライにとらえ、選手達を自身のステイタスアップのための“駒”として考えていた御仁も存在したように思います。そして、外国人監督の就任が多かった両国代表監督は長期政権を維持できない、または4年周期の政権で結果を残すことを好んでいたように思います。そして、両国代表監督に就任するためには、それなりの実績が必要であり、それがクラブをリーグ優勝に導いたり、代表でそれなりの結果を出したことのある経験者が就任してきましたが、極東のサッカーメジャー所から距離的に遠いアジア地域の監督に就任してもらうには、第一線で活躍中の監督は難しく、本場の経験者であるが、直近では結果を残せず、失意の元メジャーどころでは監督就任が難しい立ち位置で、弾き出されてしまった御仁をたまたま招聘することに成功し、その後“使い回している”のがアジア地域の現状と考えられます。要するに、妥協の産物でアジア地域に来てくれた監督をローテーションで使っているようなイメージがあります。両国の今までの代表監督を列挙してみるとよくわかると思います(2000年以降)。
【オーストラリア代表】
・フランク・ファリーナ(オーストラリア)
・フース・ヒディンク(オランダ)
・グラハム・アーノルド(オーストラリア)
・ピム・ファーベーク(オランダ)
・ホルガー・オジェック(ドイツ)
・アンジェ・ポステコグルー(オーストラリア)
【日本代表】
・フィリップ・トルシエ(フランス)
・ジーコ(ブラジル)
・イヴィチャ・オシム(ボスニア・ヘルツェコビナ)
・岡田武史(日本)
・アルベルト・ザッケローニ(イタリア)
・ハビエル・アギーレ(メキシコ)
・ヴァヒド・ハリルホジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)

 オーストラリア代表を指揮したファーベーク氏とオジェック氏は、日本のクラブ指導歴があり、ヒディンク氏は韓国代表の指導歴がありました。日本代表の監督は、ジーコ氏やオシム氏のようにJクラブでの経験を買われ就任したパターンもありましたが、様々な監督を候補に列挙しつつ、第一候補に“フラれた”妥協の結果、就任したケースが多かったように思います。また、オーストラリア代表監督の方が、比較的自国人が多いようですが、ヒディンク氏のようにクラブとの掛け持ちを認めた妥協の歴史もありました。両国とも妥協をしつつ、直近では結果を残してはいないが、かつての実績による採用が多かったようです。

 では、現在のオーストラリア代表、ポステコグルー監督はどうでしょうか?自国リーグの実績を買われ、モチベーターとしての役割は自国リーグの選手達を熟知している以上、上手くいっているように思います。一方、日本代表のハリルホジッチ監督はどうでしょうか?自国リーグの選手達を上手く使いこなせず、モチベーターとしての役割も果たせず、世代交代の谷間にはまってしまい、上手くいっていないように感じます。

 実際、両国協会は常に次期監督候補の情報収集に余念がないと思います。筆者が考えている“モチベーター”を第一の資質として考えているわけではなく、“実績”
を第一の資質として選択しているからでしょう。そして、サッカー後進国にとっては、タイプ1の監督の方が良い結果を得られやすいと考えがちですが、両国はもうサッカー後進国ではなく、中堅国に該当すると考えられるため、そろそろタイプ2の方が良い結果を得られやすくなっているのではないかとも考えます。日本では、既に次期監督候補がマスコミにて報道され始めています。10月11日の両国の対戦結果如何ではもしかしたら…。そんな報道に左右されることなく、両国とも万全の状態で良い試合をして欲しいと強く願っています。