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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.216/2016/01

第18回「オーストラリアと日本のスポンサー」


 新年明けましておめでとうございます。連載を始めて2回目の年越しを迎えました。日本では、様々なスポーツがTVで放送され、新春を彩っていましたが、オーストラリアの新春はいかがだったでしょうか?

  さて、プロスポーツ界で切っても切れないものといえば「お金」です。プロサッカー界でも興業を成り立たせるために必要な収入源は、観客からの入場料やグッズ販売、ユニフォームの提供に伴うサプライヤーとの契約料、主にテレビ局からの放映権料がありますが、広告やPRを目的とするスポンサーからの「お金」も収入源として大きな割合を占めます。そこで、2016年最初の恒例の問題です。

【Q】プロサッカークラブのスポンサーとは、何にあたるのでしょうか?

【A】リーグや各大会の“冠スポンサー”やスタジアムに掲げる“看板スポンサー”、ユニフォームの胸に社名などが掲載される“ゼッケンスポンサー”がそれに該当します。

 グラブ側は、興業を成り立たせるための経費が必要不可欠で、スポンサー側も直接的な利益や対外的なイメージ作りを期待して資金を捻出します。日本では長く、某自動車メーカーが冠スポンサーになったインターコンチネンタルカップがありました。筆者にとってこの大会イコール、この自動車メーカーとなり、実際にその自動車メーカーのイメージアップに大会が多大な貢献をしたのではないかと思います。また、オーストラリアのAリーグの冠スポンサーに外国の某財閥系企業が君臨しています。インターコンチネンタルカップと同様、某自動車メーカーですが、このメーカーは企業イメージを先行させる戦略で世界でも比類なきイメージを浸透させることに成功しました。

 そして、クラブのユニフォームにも様々な企業名などが掲載されています。サッカーの世界で初めて、ユニフォームに企業名を掲載したのが1970年代のドイツの強豪、バイエルン・ミュンヘンだったと記憶しています。当時、ドイツの某メガ・スポーツブランドの名前が入ったユニフォームは斬新でした。

 日本におけるJリーグ開幕直後は、クラブの親会社の名前がユニフォームに入っていることがほとんどでした。近年では、クラブが独立採算制を取っているため、親会社の名前が入っているクラブの方が少なくなりましたが、企業クラブがプロ化した日本ならではの状況です。また、ゼッケンスポンサーは比較的制約が設けられているようで、当然、反社会的なイメージを持たれるような企業はいくらお金を積もうとスポンサーにはなれませんし、業界として、例えばギャンブル界やノンバンク系の消費者金融業の会社がスポンサーになれない実情があります。オーストラリアでも、アルコール飲料系の業界をスポンサーにしない傾向があります。

 さて、スポンサーの特長として、オーストラリアと日本、もしくは世界的に見て共通しているのは、グローバルな大企業やその国の企業が占めているのはもちろん、その時代に景気の良い業界が多数を占めていることです。自動車や家電、食品メーカーや銀行等が、昔からスポンサーに就くことが多く、現在では携帯電話会社や航空産業界等の社名を目にすることが増えました。娯楽としてのサッカーの価値が高まり、それに比例してスポンサー契約料は、20年程前の相場と比べて10倍〜20倍に増えているようです。

 一方、オーストラリアや日本は、世界的な大企業名がユニフォームを飾ることは少なく、両国のリーグがマーケットとしてまだまだ小規模であることが理由に上げられます。しかし、地元企業が名前を載せ、地域密着の現象であるならば、両国のサッカー界の行く末を考えると身の丈に合ったクラブ経営であり、良策なのかもしれません。

 近年のサッカー界の金満主義に辟易としている筆者は、一層のことクラブのスポンサーになれるのはクラブの地元企業のみといった改革があってもいいのではないかと思っています。サッカーが紳士のスポーツと言われている一方、昨今、クラブがあまりにも営利至上主義に突出して、新たなサッカーファン獲得の弊害になっているのではと考えるからです。オーストラリアも日本も世界のメジャー級のクラブと比較すれば、資金面では苦戦していますが、今後も地元を大事にし、身の丈に合った資金調達をし、地元企業と一緒に徐々に大きくなれれば良いのでは…、筆者はそう考えています。

 それでは、今年2016年もご愛読、宜しくお願い致します。