Vol.214/2015/11
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シーズン真っ只中の世界のサッカーシーンですが、各国各クラブのスタジアムでは悲喜交々のファンやサポーターが熱狂している様子が目に浮かびます。さて、オーストラリアと日本の両国もサッカーの本場と同じように代表やクラブがホームゲームを行うスタジアムがあります。それでは、恒例の問題です。
【Q】オーストラリア及び日本でのサッカーにおける代表的なスタジアムはどこでしょうか?
【A】歴史や国際大会などの開催実績からオーストラリアは、甲乙付け難いのでMelbourne Cricket Ground とStadium Australia(ANZ Stadium)の2つ。日本は、国立霞ヶ関競技場でしょう。
まず、MCGで知られるMelbourne Cricket Groundは、名の通りクリケット用の競技場として作られました。しかし、2006年に当時のヨーロッパ王者ギリシャを招いたオーストラリアサッカー代表チームとの国際親善試合で95,103人を集客し、2013年にはプレシーズンマッチにてAリーグのメルボルンヴィクトリー対イングランドプレミアリーグのリバプールの試合で95,446人、2015年にはインターナショナル・チャンピオンズ・カップ のレアルマドリード対マンチェスターシティー戦で99,382人の集客を記録し、数々のビッグマッチが行なわれてきました。そして、シドニーのStadium Australiaは2000年のシドニーオリンピック開催のため建設され、サッカーのみならず数々のスポーツの名場面を演出しています。収容最大人数は83,500人とこちらもオーストラリア最大級であり、サッカーのアジアカップ決勝戦など重要な試合はこのスタジアムでも行われています。
一方、日本の国立霞ヶ関競技場は、1964年の東京オリンピック開催のため建設され、やはりサッカーのみならず数々のスポーツの名場面を演出してきました。収容人数54,224人と当時の日本最大規模のスタジアムで、サッカーではワールドカップ予選やクラブのカップ戦の決勝、インターコンチネンタルカップ(トヨタカップ)など重要な試合が開催されてきました(現在は2020年の東京オリンピック新スタジアム建設のため解体されています)。
さて、紹介した3つのスタジアムは両国のクラブチームのホームスタジアムとはなっていません。それは、キャパシティーが大き過ぎるからでしょう。各スタジアムとも国もしくはそれに準ずる団体が運営しており、使用の際にはそれなりの使用料を支払わなくてはなりません。スタジアムが毎試合満員御礼ならば言うことはないですが、大きいキャパシティーを埋めるほどの集客力がクラブ単位にはなく、ホームスタジアムにできない理由がそこにあります。
また日本では、Jリーグ開幕に合わせ新しくできたスタジアムや2002年のW杯のために建設された比較的キャパシティーの大きいスタジアムがありますが、スタジアムの仕様がサッカー専門ではない競技場も多かったり、陸上用のトラックがあってサッカー観戦に適していなかったり、立地の問題で利便性が悪かったりするスタジアムもありました。
現在、クラブのホームスタジアムの収容規模は、約20,000〜40,000人規模のスタジアムがほとんどです。Aリーグのスタジアムの最大収容人数平均は、約32,000人、Jリーグは約32,800人とほぼ同規模です。それでも毎試合満員御礼にするために運営側は苦労をしています。同じく、欧州メジャーリーグでも集客力に悩んでいる国があります。イタリアです。イングランドのプレミアリーグやドイツのブンデスリーガが、スタジアムのキャパシティーに対する集客率平均が8割から9割なのに対し、イタリアのセリエAは3割〜4割で、空席の目立つスタジアムで試合を行っているのが現状です。よって、オーストラリアと日本の両国ともに集客力に合わせた分相応なスタジアムを持つことが、当面ふさわしいことは変わりそうにありません。
Jリーグのガンバ大阪が今回、新スタジアム建設のために独自に企業や個人から募金を140億円も集め、新スタジアムを建設しました。サッカー専用のスタジアムで急勾配の観客席が、今までの日本のスタジアムにはない空間を演出しそうです。独特な空間を演出する箱と同時に観客がサッカー観戦以外で足を運びたくなるような環境作りが今後はどこも必要となるでしょう。例えば、ショッピングセンターを併設したり、様々なアトラクションがスタジアムのすぐそばにあれば、サッカーファン以外の集客も期待できます。今回のガンバ大阪は、その様な環境をクラブが作り出そうとしています。
サッカーファンやサッカー環境の熟成度は、オーストラリアよりも日本の方が高いと思いますが、未来のサッカー環境はオーストラリアの方が日本よりも優れると思っている筆者は、オーストラリアには今後この「環境面」の整備次第では、日本とは比べようもないうらやましいサッカー観戦環境が生まれる土壌があると思っています。