Japan Australia Information Link Media パースエクスプレス

 

日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.207/2015/04

第9回「オーストラリアと日本のサッカー環境」


今回は前置きなしに、早速、問題です。

【Q】 主観的な質問となりますが、オーストラリアと日本では、サッカーを楽しむのにどちらが環境的に適していると思いますか?

【A】筆者は、オーストラリアの方がサッカーをする環境が整っているのではないかといった印象を持っています。理由は…。

 その1)まずは、単純な国土の差です。

 オーストラリアの国土は、日本の約20倍。中央部はほとんど砂漠ですが、居住地域も日本より膨大です。ボールを蹴る場所を確保しようとすれば、日本よりも確保しやすいのではないか、という単純な印象です。


 その2)そして、場所となるグラウンドの確保です。

 このグラウンドの問題は、“サッカー環境”を語る上で非常に重要です。そこで、日本で草サッカーをしようと人数を集め、グラウンドを確保しようとした場合、どうすれば良いのか調べてみました。

 まず、思いつくのが近隣の小学校や中学校のグラウンドを借りることですが、手続きが必要で、そう簡単に借りることは難しいようです。ならば、私営の施設のようなものはといっても、そうそうあるものでもありません。

 考え方を変え、ボールを蹴るのならばフットサルのコートでもいいのではないかと思い、近隣のフットサルコートについて調べました。フットサルコートは、近年の人気上昇もあって何ヶ所か確認できました。利用料金は、仕事終わりの平日夜間、2時間で約1万円でした。フットサル用の小さなスペースではありますが、なんとかボールは蹴れそうです。

 しかし、筆者が子どもの頃、自宅前の道路や空き地でやっていたストリート・サッカーは、昨今の居住環境や交通事情、近隣住民の目も気になって、ほぼ不可能です。公園もありますが、球技禁止を謳っているところが多く、サッカーをする環境としては不向きです。要するに、日本の都市部では“思いつき”でサッカーができないのです。

 筆者が少年時代、テレビでスター選手のプレーを観た直後に道路や空き地、学校の校庭でモノマネをしたものです。日本はそういった“ひらめき”が育ちにくい環境になってしまったとも言えるでしょう。残念ながら、プロ選手やその予備軍、学校の部活動に参加している生徒以外のサッカー好きが、いざ思いつきでサッカーをしようとしても簡単にできなのが、今の日本なのです。

 一方、オーストラリアでは、白線が引かれたサッカーグランドがあちらこちらにあるとまでは言いませんが、住宅街で公園を探すのは難しいことではありません。しかも、その公園のサイズは、まさに文字通り、広大そのものです。もちろん、ボールは蹴り放題です。


 その3)3番目に、グラウンドの質です。

 オーストラリアのサッカーグラウンドは、ほとんどが天然芝。そして、サッカーを楽しむ少年少女たちは、天然芝のグラウンドでプレーすることが当たり前だと聞きました。筆者が少年時代、天然芝のグラウンドでサッカーができたのは、部活動の公式戦で、たった一試合しか記憶にありません。そして、日本の少年少女たちの現状を見ても、未だに土のグラウンドで練習や試合を行っていることが多いようです。

 かつての日本のアスファルトの上のストリート・サッカーや放課後、校庭の土の上でのサッカーですらできなくなった今の日本に比べて、近所の緑の芝生が敷き詰まった広大な公園で、自由にボールを蹴れるオーストラリア。この環境の差は、雲泥と言っても過言ではないでしょう。


 

 以上、3つの点からもオーストラリアの環境は、サッカーをする上で、確実に日本よりも恵まれていると思います。サッカーのプレー人口やプロリーグの歴史は日本が先行していますが、サッカーを楽しむ環境は、オーストラリアの方に将来性を感じます。この将来性とは、サッカー少年少女たちの育成においての前記の“ひらめき”型のテクニックや魅せるプレーができるモンスター級のスーパースター選手が育つ可能性とも言い換えられるでしょう。習い事のように教わるサッカーではなく、公園や空き地で、思いつきでプレーできる環境の方が、そういった枠にはまらないテクニックやプレー、選手が育ちやすいと筆者は考えます。