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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.202/2014/11

第4回「AリーグとJリーグ」


 今回は前置きなく、早速問題です!

【Q】アジア圏にて最初にプロサッカーリーグを創設したのは、どこの国でしょうか?

【A】大韓民国(以後、韓国)の「スーパーリーグ」です。1983年からスタートし、日本のJリーグがスタートした1993年以降「Kリーグ」と呼称され、2013年から「Kリーグクラシック」が正式名称になっています。

 さて、その韓国ですが、プロリーグを創設後、アジア圏にて安定的に強さを発揮できるようになり、代表は1986年から8大会連続してW杯出場を果たしています。一方、日本のプロリーグ創設は、1993年の「Jリーグ」となりますが、創設後1998年から同じく、W杯には連続出場を果たしています。そして、オーストラリアは2004年にプロリーグ「Aリーグ」を創設(本格的リーグ戦開始は2005年)されましたが、こちらも創設後は2006年、2010年、2014年と連続してW杯に出場しています。

 オーストラリアも日本も、サッカープロリーグ創設の背景には、潜在的なサッカーファンを抱えていた土壌がありました。まず、オーストラリアには、NSL(ナショナルサッカーリーグ/National Soccer League)というサッカーリーグが存在していました。しかし「サッカーは移民のスポーツ」とし、国を挙げて盛り上がっていたとは言えず、生粋のオーストラリア国民は「サッカーはオカマのスポーツ」と位置付けていた時代もありました。一方、日本にはJSL(日本サッカーリーグ/Japan Soccer League)というサッカーリーグがあり、コアなサッカーファンが育つ土壌はあったと言えるでしょう。但し、企業スポーツの域を脱しているとは言えず、企業の本社がある東京圏と大阪圏にチームが集中し、その企業に勤めている社員以外にチームのファンを育てるには環境的に難しかったのです。要するに、両国とも潜在的なサッカーファンは存在していましたが、そういった人たちが表立って応援をするには環境的な問題を抱えていました。

  そこで、両リーグのレギュレーションや経済的基盤、マーケティング手法の類似点や相違点を紹介します。

<類似点>
【レギュレーション】●外国人枠が存在する。
【経済的基盤】●リーグ機構がリーグスポンサーや放映権を管理。分配方式を採っている。
【マーケティング手法】●地元サポーターをリピーターとして重視。入場料やグッズ販売などを主な収入源としている。

<相違点>
【レギュレーション】
●選手の報酬面でAリーグはサラリーキャップ制で、マーキープレーヤー(サラリーキャップ制の制限を受けない選手)は、各チーム1人に限定される。Jリーグは報酬面の上限は特にない。
●Aリーグはリーグ戦後、上位6チームによるプレーオフ制。Jリーグは、1ステージで最終順位確定。
【経済的基盤】
●Aリーグは、リーグ冠スポンサーが存在する。
●Jリーグは、リーグに冠スポンサーは存在しない(パートナーシップスポンサーは存在)。
【マーケティング手法】
●Aリーグは、近年欧州マーケットの選手獲得の実績や、欧州にて選手の移籍先として話題になることが増えている。興行目的とした選手獲得に積極的。
●Jリーグは、興行維持目的の選手獲得の機会はAリーグに比べると消極的で、かつ少ない。

 さて、ここで2つ目の質問です。上記類似点や相違点を踏まえた上で、例えば移籍先を探している外国人選手が、移籍先候補としてAリーグとJリーグのみの選択肢で、報酬条件が仮に同一であった場合、その選手はどちらのリーグを選択すると思いますか?

 筆者は、Aリーグを選択するのではないかと思います。理由は、様々な地域から来た移民で作られた国であるオーストラリアは、外国人にとっても過ごしやすい環境があると言うに及ばずだからです。また、オーストラリアの人口は約2,300万人、日本の人口は約1億2,000万人。人口比較での単純なマーケットの規模では、日本の方が大きいと言えます。しかし、オーストラリアは、少しずつ人口は増えていますが、日本は少しずつ減っています。もう少し客観的な比較材料として、国際サッカー歴史統計連盟が発表する2013年世界リーグランキングを参考にすると、Aリーグが52位に対し、Jリーグは27位です。しかし、筆者は今後、選手獲得に関する競争やACL(アジアチャンピオンズリーグ)での成績面で、AリーグはJリーグを凌駕するであろうポテンシャルを感じています。

 近年の金満な欧州サッカー界と比べればAリーグ、Jリーグ共に規模は小さいと言わざるを得ませんが、アジア地域に限定すればトップクラスの実績を築きつつあります。オーストラリア及び日本が友好的なライバルとして代表のみならず、リーグでもお互いに切磋琢磨し、アジア圏にて独特な、欧州や南米のとは違う発展をしてくれることを切に願います。

 最後に、ウエスタン・シドニー・ワンダラーズのACL優勝おめでとうございます!Jリーグにとって、Aリーグは今後ますます手強いリーグとなりそうですね。