Vol.199/2014/08
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はじめまして!本誌パースエクスプレスと縁有って、今回から“日豪のサッカー”について日本からお届け致します。初回は、「オーストラリア出身のJリーガー」です。そこで、早速問題です。
【Q】1993年に華やかにスタートした日本のJリーグですが、オーストラリア出身選手が初めてJリーグのクラブでプレーしたのは「どこのクラブ」で、「だれ」だったでしょうか?
【A】正解は、サンフレッチェ広島にて1997年から5シーズンプレーしたDFのアンソニー・ポポビッチ(Anthony Popovic)と、同じく1997年から2シーズンプレーしたFWのグラハム・アーノルド(Graham Arnold)、そしてこちらも1997年からヴィッセル神戸にて2シーズンプレーしたDFのマシュー・ビングリー(Matthew Bingley)でした。
サンフレッチェ広島が監督として1997年に招聘されたスコットランド人で、オーストラリア代表監督だったエディ・トムソン(Eddie Thomson)は、自身の監督就任と同時にオーストラリア代表経験者2人を連れてきました。まず1人目のポポビッチは、クロアチア系移民の選手で、屈強なフィジカルを有したセンターバックでした。クラブの経営難が叫ばれている時期のディフェンス・リーダーとして、抜群の存在感を発揮しました。
2008年で選手生活にピリオドを打ったポポビッチはその後、2012年にAリーグに新規参入したウェスタン・シドニー・ワンダラーズFCの初代監督に就任し、レギュラーシーズンでいきなり優勝、グランドファイナルでも準優勝といった優秀な結果を残しました。そのポポビッチをピッチで支えたのが、現コンサドーレ札幌の小野伸二だったことは、皆さんの記憶に新しいと思います。
次に、2人目のアーノルドですが、当時クラブが攻撃陣を若手主体に切り替える戦略を取ったため、出場機会が限られ、強いインパクトを残すには至りませんでした。ただ、Jリーグの2014年シーズンでは、ベガルタ仙台の監督を務めました。残念ながら、成績不振でシーズン途中で退任しましたが、Jクラブの監督として、アーノルドがオーストラリア人初となりました。
そして、前述の2選手と同様にオーストラリア代表経験があるビングリーも、満を持してヴィッセル神戸に入団しましたが、出場機会には恵まれませんでした。日本を後にし、オーストラリアに戻ったビングリーは、2003年にAリーグの前身となるナショナルサッカーリーグ(NSL)のパースグローリーでプレーしています。その時、チームの中心選手の1人として、NSL最後のチャンピオンへとパースグローリーを押し上げました。
さて、3選手がJリーガーとなった当時、Jリーグはサッカーバブルが弾けた後で、それまで莫大な経費を親会社が補填していましたが、それも叶わなくなり、各クラブが自己責任にて試行錯誤しながらクラブを維持しなければならない苦しい時期でした。
それまでのJクラブは、海外(欧州および南米)のかつてのスーパースターを1人在籍させ、莫大な年棒を支払っていました。興行を念頭に置いたチームの強化策がなされていた時代とも言えます。ところが、経験したことのない不況色がJリーグを灰色に塗り替えると、各クラブは新たな選手獲得に費用が割けなくなりました。興行を維持するために看板選手を獲得する一番“楽”な方法も、資金難のために不可能になったのです。そこで、綿密なスカウティングを施す余裕もないクラブは、監督のかつての教え子を呼ぶ手段を即効性のある強化策として採用し始めたのです。そんな中、日本国内で決して観ることのなかったオーストラリア出身の選手たちが、Jリーグでプレーする機会を得たのです。彼らがJリーグでプレーすることは、とても新鮮に映りました。
オーストラリア人とJリーグの歴史は、1997年からスタートし、現在もその歴史は続いています。現在では、名古屋グランパスのジョシュア・ケネディ(Joshua Kennedy)が、オーストラリア出身の選手としてJリーグでプレーしています。
近年、オーストラリアから日本に来る選手よりも、日本からオーストラリアへ行く選手の方が増えているかもしれません。Aリーグが10年という節目を越え、世界のサッカーシーンの中でも魅力的な環境だと認知し始めたからなのでしょう。実際、選手獲得に関するニュースやAFCチャンピンズリーグの戦績、また興行面からも、現在のJリーグよりポテンシャが高いリーグなのかもしれません。
1997年にサンフレッチェ広島でプレーしたポポビッチとアーノルドは、今でも日本と深く関わっています。小野伸二を自身のチーム招き入れたポポビッチや、Jリーグ最初のオーストラリア人監督、アーノルド。最初のJリーガーとなった彼らパイオニアは、オーストラリアと日本とのサッカー界の橋渡しとして、今もなお重要な役割を担っています。