第13回
【前回までのあらすじ】
沢田百々子、30歳。シェアメイトのリンが学校で襲われかけた。百々子は怯えるリンを迎えに行き、帰宅するとそこにはあの恩田正平が立っていた。 |
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第19走者
筆者:豊田
タクシーから降りたリンは、「彼が…」と言って、私の後ろに隠れた。「私を追ってトイレに…」と、そう付け足すとまた怯えるようにして、後ろから私にしがみついてきた。
恩田正平は一点を見つめたまま、視線は動かなかった。その一点の先は私だったが、どこか私とも焦点が合っていなかった。
「恩田君…」
「・・・・」
「どうした…、なに…?」
「・・・・」
「そこ、いい?どいてくれる」
「・・・・」
恩田は一言もしゃべらなかった。恩田の横を通り抜け、まずはリンを部屋に届けた。リンと目で合図して、エントランスに戻ると、恩田の姿はなかった。思い返すと、あの恩田の顔は別人のようだった。百々子が今まで見たことのない恩田の、正気のない顔に一抹の不安が残った。
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