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リレー小説
Vol.224/2016/09
第3回
今回は、2名の方からの投稿がございましたが、内容によって連結させて頂きました。


【前回までのあらすじ】
沢田百々子、30歳。ワーキングホリデーでパースへ。空港からバックパッカーズに移動して、チェックインを済まそうとパスポートを探すが、ないことに気付く。

第3走者
筆者:ジェザ


 カウンター越しの大柄な男は、「That's okay」と低い声で言って、無愛想にルームキーを手渡した。別にパスポートで証明しなくてもいい、といった軽い合図を交え、部屋番号を気だるそうに伝えた。そして、日本総領事館の電話番号が書かれた邦人誌をカウンターの上に置き「Should call them and tell where you lost」と面倒くさそうに教えた。

階段を登るその日本人の後ろ姿を思い出せたら、今、こんな苦労はしていない。警察もここまで尋問に時間を使わなかっただろう。だが、記憶の一片すら残っていない、沢田百々子は誰だったのだろうか…、とその男は思った。


第4走者へ続く


第4走者
筆者:摩天楼


 どこを探しても、パスポートは見当たらない。バックパッカーズのカウンターの前で荷物という荷物は全て開け、確認したけど出てこなかった。チェックインでは必要ないと言われたけど、この後、すぐに領事館に行こう。今、時間は朝の7時。

 せっかくの門出だったのに、水を差された感じになってしまった。もちろん、自分が悪いんだけど。“パスポートの悪用”とGoogleで検索すると、そこまで被害はなさそう。でも、気持ち悪いことは間違いない。

 気分を変えるため、シャワーでも浴びようと部屋から一歩出ると、確か同じ飛行機でパース入りして、税関でも同じ列にいた男とすれ違った。気のせいかと思ったが、確かに同一人物だと思う。振り返る先には、もうその男はいなかった。


第5走者へ続く