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リレー小説
Vol.222/2016/07
新コーナー登場!
本誌に一般読者の方からリクエストを頂きました。「パースでの思い出作りのページを作って欲しい」と。そこで本誌編集部では「リレー小説」を提案します!  ルールは、至って簡単です。掲載されてた文章に不特定多数の読者の皆さんが、ストーリーを繋げていきます。文字数は自由です。フィクションでも、ノンフィクションでも結構です。応募多数の場合は、本誌編集部で抽選とさせて頂きますが、内容によっては連結させて頂き、複数掲載の場合もございます。  ちなみにタイトルは、いろんな人に書きつなげてもらって一つの作品にするという意味も込めて「パースパノラマパズル」にしました。それでは、皆さんのご応募、お待ちしております!

第1走者
筆者:パースエクスプレス編集部


 ロサンゼルス国際空港。時刻はもうすぐ夜8時。出国ゲートを抜けたターミナルの中で、私は一人、手元の赤いパスポートとパース行きの航空券を見つめていた。もう枯れたと思ったはずの涙が、また私の頬を濡らした。沢田百々子、30歳。

 今まで働いていた会社に辞表を出したのが2ヶ月前。東京とサンフランシスコという遠距離恋愛に終止符が打たれたのも2ヶ月前。半年後に私のサンフランシスコ勤務は終わり、日本で彼と結婚するはずだった。そんな彼から突然、電話で『ごめん、やっぱり俺、百々子のこと待ってらんない。お前みたいにカッコイイ女なら、俺よりずっと相応しい男がいるはず』と言われ、彼との5年にも及ぶラブストーリーは幕が引かれた。

 「何だったんだろ…、私のこの3年」彼との電話が終わって、私は一日中泣いた。そして、何も考えたくなくて、ぼんやりとテレビを見ていた時にディズニーの新しい映画の宣伝に目が留まった。舞台は、オーストラリアの海。「オーストラリアか。考えたこともなかったな・・・」

 渉(あゆみ)君もいなくなって、今の私に残っているのはそれなりにまとまったお金と、3年間で叩き上げた英語。ふと、自分の隣に置いていたケータイが揺れた。Facebookが更新されたというお知らせ通知だった。普段なら無視してしまうメッセージだが、今日は何となくその通知を開いた。『遂にセカンドビザが手に入った!次の1年間の目標は、パースでイルカと泳ぐこと!』メッセージと共にあげられていたのは、ウルルを背に満面の笑みを浮かべる、幼馴染の万里の姿。私がこっちに赴任することになった時、空港に見送りに来てくれた万里だったが、あれから3年、私は万里が何をしているかなんて全然知らなかった。その万里が今、独りでオーストラリアの大地を軽快に踏みしめて生きている。そう思ったら、こんなところで蹲ってる暇なんてないと思い、私はパソコンの電源を入れた。

 オーストラリアのワーキングホリデービザを申請して、会社に辞表を出し、住んでいたアパートメントを退去。今の私が持っているのは、パスポートと航空券、それにラベンダー色のスーツケースだけ。行き先は、万里がイルカと泳ぐと言っていた、パースに決めた。今までの人生に終止符を打ち、新しい自分に出会うための旅に出る私。携帯を取り出し、渉くんの連絡先を開いて短いメッセージを送り、彼の連絡先を削除した。『渉くんの想像をはるかに超える、カッコイイ女になってきます』

 携帯のバックライトを落としたのと同時に、搭乗口が開くアナウンスが耳に届き、機内へ歩を進めた。座席に着き、「目が覚めたら、私は地球の反対側、南半球にいるのだ」と思い、ゆっくり瞼を閉じ、深呼吸をした。そのまま意識はゆっくりと白くなり、私は眠りの淵へと飛び込んでいった。だから私は、機内を回っていた一人のフライトアテンダントが、私のことを意味ありげに見つめていたことなんて知る由もなかった。

第2走者へ続く