「視線のその先には」

詳しくは思い出せないが、その当時の知識・経験から、体感的な仮説を思い浮かべてみた−−−もしかしたらこれからの世界は、エネルギーや資源の奪い合いの闘争時代に入っていくのではないか、と。イデオロギーよりも実利へと振り子が動くのではないか。全く根拠のない思いつきであった。が、その思いつきは妄想のように広がっていった。さらに、考えてみると、ある種の不安が頭をよぎった。枯渇するであろう石油、天然ガス、貴重鉱物は今、地球上のどこに残っているのか?

これまで未開だった地域や、不要や利用価値がないとうち捨てられてきた辺境にこそ、そういう資源が残っている。あらためて、無用の地が貴重な地と再認識されるようになった。ところが、このような辺境地域は、そこに入ってみると分かるのだが、決して無主の地ではない。歴史的に迫害され、不便な地域に追いやられてきた人びとがその(まだ目に見えぬ)資源の上で、ささやかともいえる営みの日々を成り立たせている。
   


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