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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda

Vol.203/2014/12


「記憶と記録の交叉(2)」



ビルマ(ミャンマー)とタイの国境、山中の難民キャンプで撮影した写真

リベラル色が強い米国東部ボストンで開かれたデイビット・デューク氏の講演会(1991年3月)。



 ビルマ(ミャンマー)で撮影したフィルム整理をしていたら、米国ボストンで写真を修行していた時(1990年代前半)の白黒写真が、いくつか紛れ込んでいることに気づいた。
 その一つが、デイビット・デューク氏(David Duke)の写真であった。彼は、日本の人には余りなじみのない人物である。試しに彼の名前をネット上で検索してみると、例えば、ウィキペディアでは次のように紹介している。

 

David Ernest Duke (born July 1, 1950) is an American White nationalist, writer, right-wing politician, former Grand Wizard of the Knights of the Ku Klux Klan, …。

 

 つまり、彼は、あの悪名高きKKKのリーダーであった。この写真を撮影したのは、1991年3月のこと。今からおよそ四半世紀も以前のことだ。“David Duke”で検索した結果をいくつか見てみると、昨年2013年、訪問していたイタリアから国外退去させられていることも分かった。国外退去の理由は、おおざっぱに言うと、彼が差別主義者(と反ユダヤ主義者)であるからだとされている。差別主義者としての彼の活動は、時間が経とうが、途絶えることなく連綿と続けられていたのである。
 そもそも私が「KKK」という団体の名前を知ったのは、米国南部で黒人を差別し、リンチを加える秘密組織としてであった。黒人たちは、肌の色が異なるというだけで差別の対象となっていた。もちろん、どんな社会でも人が集まれば、事の大小はあれども差別は起こる。だが、それを法(と倫理)によって克服してきたのが現代である。しかし、米国(もちろん他国でも)では今でも、黒人や有色人種に対する差別意識は残っている。それもまた、厳しい現実である。また米国ではここ数年、黒人に対する警官による過剰な対応で命が奪われている事例が発生している。法だけでは規制できない社会(というか世間の)雰囲気が、やっぱりある。