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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda

Vol.202/2014/11


「記憶と記録の交叉(1)」



 この子どもたちは、今、どこで、何をしているのだろうか。ふと、そんな事を思った。

 9月初め、試しにこの集合写真をウェブ(SNS)にアップしてみた。すると、この写真に写っている当の人物、あるいはその友達らしき人からの反応が、直接返ってきた。


 “Wow, this camp was close to Eden Valley Academy (my old school). A lot of children from this camp attended EVA too. They are now spread out all over the world. Thanks for sharing.”

 “Thank you for the tag. Really want to have a hard copy of this. I can see some teachers at the back (dad with white shirt, bro Eldrick with blue T-shirt n Thara Htoo Lay n wife). Also my lil bro Chai as a toddler with light blue T-shirt at the back.”

 “Is this picture taken in kler ko lay kler. Really miss the place.”


 直接のコメントではなかったが、タイ、米国、英国、オーストラリアからも5人のリアクションがあった。

 やがて集合写真での「ひとまとまり」の子どもたちに、一人ひとりの物語が浮かんできた。難民キャンプで暮らしていた子どもたちには、当時の生活の記録がほとんどない(と思われる)。あの日、あの時、この人たちは難民として山の中に逃げ暮らしていた。そんな記録が手元にあるのだ。雨季の真っ只中の21年前、雨に濡れながらも、無理してキャンプを訪れ、写真を撮っておいて良かった。取材当時は、「今、『辺境』で何が起こっているのか、それを伝えなければ」と思っていた。時間が経ってみると、偶然にも、彼らの持つ思い出(記憶)と私の記録が交叉しているようだ。

 自分はこれまで、外国人として海外で起こっていることを取材撮影し、日本の雑誌で発表してきた。想定している読者は、あくまでも日本にいる人である。だが、このように海外で写した写真をウエブ(SNS)で公表することで、特に写真の場合であるので、読者(読み手)は一気に世界に広がった。

 本当に時代が変わったんだなあ、という実感である。撮影者と被写体の関係が変わったのである。

ビルマ(ミャンマー)で撮影した写真は約10万枚

ビルマ(ミャンマー)で撮影した写真は約10万枚。そのうちフィルムは2万5千枚くらい。