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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda

Vol.198/2014/07


「抗いの彷徨(8)」



ゴミの中から「天使の羽」が付いた衣装を引っ張り出して身に付け、ふざけまわる男の子(フィリピン)

パーティー用品かイベント用品なのか、ゴミの中から「天使の羽」が付いた衣装を引っ張り出して身に付け、ふざけまわる男の子(フィリピン)。

 「ゴミ捨て場で写真撮影をしている」って言うと、多くの人から尋ねられる。「危なくないのですか」と。


 確かに、あまり治安の良くない国の治安の良くない地区で、首から高価なカメラをぶら下げてウロウロしているのだから、そう思われて当然である。しかし、である。よく考えてみると、朝から晩までゴミ捨て場で、泥だらけ埃だらけになりながら働いている人びとは、基本的に真っ当な人が多いのである。そうでなければ、それこそ、かっぱらいや強盗にでもなって、安易にお金を稼ごうとする方が楽だからである。

 もちろん、どこであっても値の張りそうな一眼カメラを見せびらかすような振る舞いは、犯罪を誘発する恐れも否定できない。しかし、それでも貧しい=犯罪多発という図式は、当たっているようで当たっていない。私の経験では、ゴミ捨て場での撮影はそれほど緊張しない。ただ、ゴミ捨て場のある場所は、経済的にゆとりのない地区にある場合が多いので、撮影への行き帰りは正直なところ、気を抜けなかった。


 ちなみに、東南アジアで“ゴミ捨て場で働く人びと”といえば、フィリピンの首都マニラのスモーキー・マウンテンであろう。それこそ、途上国の貧困を象徴するゴミ捨て場だからである。そこに行けば、ゴミ捨て場で働く人びとの写真を、それこそ簡単に撮ることができる。紛争地を目指してパレスチナやアフガニスタン、イラクなどに行けば、お望み通りの現場に立ち会えるように…。

 もちろん、貧困の問題や紛争(戦争)の問題が起こる現場を見たり、現実に立ち会うことは重要である。そこから出発するということも必要だろう。だが、現場は取材者の取材のためにあるわけではない。

 アフガニスタンで長年、協働活動を続ける中村哲氏は書く。