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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.184/2013/05

「ビルマ(ミャンマー)の『ロヒンジャ問題』を手がかりにして
─番外編─」



スーチーさんが写った自分の写真集にサインをもらう

長年、スーチーさんを撮り続けてきたが、直接言葉を交わしたのは今回が初めてである。スーチーさんが写った自分の写真集にサインをもらう(K・T撮影)。



 東南アジア最後の軍事独裁国家ビルマが(形の上で)「民政移管」したのは2011年3月。誰もが過度の期待をスーチー氏に持った。だが、一人の人が国を変えるような変化を期待するのは間違いだ、とスーチー氏は言う。この間の変化について私は、ある雑誌のインタビューに次のように答えた。  「スーチーさんを見るのではなく、スーチーさんが向いている方向を見て欲しい」  「これまで、ビルマの人びとの共通の敵は『軍部』でした。そして今、新しい政府が表面的な変化をしても、一般の人びとのもつ官僚組織や上に物を言わないメンタリティは変わっていない。暮らし向きが変わりつつある中、人びとの不平不満は、すぐ隣の少し良い暮らしをしている人に向かうこともある。それは、まだまだ民主化と呼べない段階です」  さらにビルマ問題は、民主化問題というよりも、実際のところ民族問題である。軍政当時、ビルマ国内の知人たちに「『軍事政権』と『ムスリム』のどちらを選択する」と聞いてみると、ほぼ例外なく「それは、軍政の方だよ。だって、なんだかんだと言ってもビルマ人だからね」という答えが返ってきた(※ビルマでは、ムスリムも一つの民族として考える)。  スーチー氏の訪日時、ムスリム系の「ロヒンジャ」人びとの集団だけが、スーチー氏を迎える集まりへの参加をビルマ(ミャンマー)人たちから拒否されたという事実もある。

(続く)