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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.183/2013/04

「ビルマ(ミャンマー)の『ロヒンジャ問題』を手がかりにして(7)」


夜明け前、スーレー・パゴダ(仏塔)の門が開く前から手を合わす人びと

人口約6,000万のビルマ(ミャンマー)は、上座部仏教を信奉する人びとが85%ほどを占める。最大都市ヤンゴンの中心、夜明け前、スーレー・パゴダ(仏塔)の門が開く前から手を合わす人びと。



 前回までの話 ─ 軍事政権に終わりを告げ、上からの改革が進むビルマ(ミャンマー)の西方ラカイン州で、イスラーム系のロヒンジャと呼ばれる人びとに対して、国民の大多数を占める仏教徒からの迫害が続いている ─

   3月半ば、ビルマ中部の都市メッティーラで新たな事件が起こった。伝えられるところでは、貴金属店で値段交渉をしていた仏教徒の客と店主のムスリム人が些細なことで喧嘩となり、仏教徒の客が大けがをした。それに対して仏教徒たちがムスリムの店を焼き討ちにする。その報復として、今度はムスリムが僧侶を殺害した…。暴力の応酬はやがて町を上げての騒動となり、40人を超える死者を出す衝突にまで拡大した。この衝突を受けて数日後、仏教徒とムスリムの対立は、マンダレー地域や最大都市ヤンゴン近くにまで広がった。さらに、治安維持を理由に軍が動員され、夜間外出禁止令が発動される事態にまでなった。
 現地から伝わる状況を facebook で見た。今回の衝突は仏教徒とイスラーム系ロヒンジャとの対立というより、多数派仏教徒によるイスラーム教徒(ムスリム)全般に対する凄まじい憎悪を感じてしまった。生きながら焼き殺されたり、マチェーテ(山刀・大型の鉈)で頭部を切り落とされた人もいた。まさに血で血を洗うような事件が起こった。これまでは何ら問題なく暮らしていると思えていた彼らが、ちょっとしたことをきっかけに、どうしてそこまで憎しみ嫌うのか、私にはよく分からなかった。
 ただ4月に入ると、憎悪を煽った対立はやめよう、と若者や仏教徒たちも声を上げ始めた。さすがに、何かがおかしいと感じ始めた人も動き出したのだ。