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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.158/2011/3

「写真民俗誌/写真民族誌への手がかり(3)」


 先月号(連載シリーズ132)では、ビルマ(ミャンマー)各地に建つ時計台の写真について話を膨らませた。
「時計台というイメージを前にして、故郷を思い起こす時計台の写真が、実はそれが植民地主義のシンボルではないかと気づいた。その思考の飛躍のきっかけの原因はなんだったのか」
この疑問がずっと頭から離れないのである。時計台が植民地のシンボル? これはただ偶然の思いつきなのであろうか。実は、この問いの答えへのヒントが、前回の話で引用した民俗学者・宮本常一氏の語った、その写真撮影術の中にあった。
「写真を撮すという行為は、自分の見たことの確認であり、写っている事象、さらには写っていないモノまでも写真に含めている」
見るという行為を突き詰める姿勢である。

前回とは違った例を挙げてみよう。

この写真(下左)を撮影する際に考えたことは、静と動である。ずらっと並んだ1000体にも及ぶ仏像を中心にして、その周辺で忙しく日々の営みを続ける人間像を記録しようとした。
ただ座って動かぬ仏像群と2人の人間が歩く構図のバランスを考えてシャッターを切った。
画像を拡大してみると(下右)、男女が薪運びをしている。

写真1
写真2