2月20日、岡田克也日本外務大臣は、シドニーにてケビン・ラッドオーストラリア連邦政府首相と会談した。その際に岡田外相は、米環境保護団体シー・シェパードによる南氷洋調査捕鯨への妨害行為に関して「暴力的な行為は絶対に許されない。シー・シェパードはオーストラリアを寄港地の1つにしており、寄港することがあれば断固たる対応をしてもらいたい」と要望した。これに対してラッド首相は、「暴力的な行為は受け入れられないが、法的根拠がなく困難だ」と述べた。この会談の前日、ラッド首相は日本の調査捕鯨の停止を国際司法裁判所に提訴する構えを見せていた。民放テレビ局セブン・ネットワークのインタビューで「来季の調査捕鯨が始まる前の2010年11月までに提訴を行なう」といった期限についても明言した。ラッド労働党は、2007年11月に行なわれた連邦総選挙戦にて日本の南氷洋調査捕鯨に対し、国際司法裁判所に提訴してでも停止させると公約している。
翌21日、岡田外相は、西オーストラリア州パースにてスティーブン・スミス
オーストラリア外務大臣と会談した。会談後に行なわれた共同記者会見では、日本そして地元のメディアが大勢詰め掛け、両国代表質問では共に捕鯨問題について言及された。日本側から挙がった「シー・シェパードの違法な行為に対してオーストラリア側は何ができるのか」といった質問に、スミス外相は「攻撃的で違法な行為は容認できない。しかし、捕鯨問題については2国間での立場は異なり、オーストラリア政府としては南氷洋調査捕鯨に対して国際捕鯨委員会(IWC)で解決をみることができなければ、国際司法裁判所に持ち込み、南氷洋での調査捕鯨停止を求める」と明言した。また、オーストラリア側の「期限内の解決がみられない場合は、両国間の関係にダメージを与えるのでは」との質問に、岡田外相は「提訴への言及は非常に残念。IWCまたは2国間でしっかり協議すべきだ」と反論した。
当会談で捕鯨問題以外では、核軍縮、不拡散について『核兵器のない世界』を目指す共同声明が発表され、また自衛隊と豪軍の間で燃料を融通できる物品役務相互提供協定(ACSA)締結に向けた協議開始を合意するなど、核関連や安保問題では両国の足並みは揃った。
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岡田克也日本外務大臣(写真右)とスティーブン・スミス
オーストラリア外務大臣(写真左)の共同記者会見の模様。捕鯨問題について両国間の溝は浮き彫りとなった。
両国メディアにとって大きな注目がよせられた捕鯨問題。
両外相の握手により会見は終了した。
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