パースエクスプレスVol.124 2007年5月号


≫ 在パース日本国総領事 佐藤 虎男氏 着任
≫ 「第12回世界マスターズ水泳大会」に出場 歌手・女優 中尾ミエさん 本誌独占インタビュー



 政治
  在パース日本国総領事 佐藤 虎男氏 着任

4月24日に当地入りし、在パース日本国総領事館第19代総領事に 着任した佐藤虎男氏に、在任中の抱負などについて伺った。

Q:パースの最初の印象をお聞かせください。
 -今から25年くらい前、ニュージーランドに在勤していた頃、オーストラリア東部を家族で訪れたことがありますが、パースを訪れたのは、今回が初めてです。出発前、いろいろな人から「パースは良いところだ」と聞かされ、また旅行ガイドブックやインターネットでもパースは「世界で最も美しい街の一つ」として紹介されていました。私自身、これまでいろいろな国を訪れてきましたが、いずれの国もそれぞれ良いところがありましたので、正直、半信半疑でパースに参りました。パースに来て2週間が経ちましたが、評判にたがわず自然と街が見事に調和している都市であり、その美しさに感動しています。
  また街を歩きますと、ビルの建設ラッシュもあり、街全体が活気に溢れている様子が伺われます。西豪州は資源に恵まれていますが、折からの資源ブームも手伝ってか、街では高級車が走り、スワン川にはヨットが繋留され、また立派な家も多数建設されている等、経済が好調に推移していることが実感されます。しかしながら、こうした中で一方では、人手不足といった問題が経済発展の負の側面として、表面化してきているのではとも感じました。


在任中の抱負を語る佐藤総領事

佐藤 虎男(さとう とらお)総領事略歴
1973年 外務省入省
1975年

1994年

カナダ、フィリピン及びニュージーランドの各大使館に勤務。またこの間アジア局南東アジア第二課勤務。

1995年 在ボストン日本国総領事館 領事
1997年 在フィリピン日本国大使館 参事官
2000年 在ヒューストン日本国総領事館 首席領事
2002年 中南米局カリブ室長
2004年 在アイルランド日本国大使館 参事官
2008年 在パース日本国総領事館 総領事

Q:前任のアイルランドとオーストラリア、パースとのつながりについて。
 - アイルランドの主食はじゃがいもですが、19世紀の中頃にアイルランドで、いわゆる「じゃがいも飢饉」が発生し、少なくとも100万人以上が餓死したと言われています。飢饉のため、国内で生活できなくなった数百万人の市民は、新天地を求めて、移民として海外に出て行き、その結果、当時約800万人いた人口も半分以下になってしまったそうです。移民の多くは、英国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった英語を母国語とする国々に赴きました。こうした歴史的経緯もありまして、現在、世界ではアイリッシュ系と名乗る人々の数は7500万人以上にものぼっていると言われています。当時、その流れでオーストラリアにも多くの人が移民として入り、現在、移民人口はオーストラリアの人口全体の3割を占めていますが、その半分が英国系とアイルランド系であると聞いています。
 アイルランドは、ここ10〜15年の間に見事なまでの経済発展を遂げ、今日、EUの中でもルクセンブルクに次いで2番目の経済的優等生になっており、こうした経済発展を背景にアイルランド人も豊かな生活をおくっています。経済発展という観点からすれば、西豪州も豪州内の優等生的存在といえましょう。また、豪州人も概してフレンドリーですが、親切心という点ではアイルランド人がより優っているかもしれません。これはアイルランド人が、イギリスの植民地として約800年もの間、支配下に置かれ、弱者として虐げられた痛みを知っていることも一因かもしれません。

Q:在任中の豊富をお聞かせください。
 -総領事館の最も重要な仕事の一つは、申し上げるまでもなく、在留邦人の皆さんの保護や支援を行なうことです。大使館や総領事館は一般的に敷居が高いと思われ、敬遠する人が少なくないようですが、在留邦人の方々のためによりアクセスがしやすく、頼りになる役所と思われるように今後もしていきたいと思っています。また、日本国の経済的利益の維持、増進を図ることも総領事館の重要な仕事の1つです。日本と西豪州では、従来より貿易、投資等経済面で緊密な関係が維持され、両者間の関係は良好に推移してきております。しかし経済関係は、「物」を媒介した関係ですので、両者の関係をより良いかたちで発展させていくためには、「心と心」の交流が不可欠です。それは、人的交流や文化交流を通じて初めて実現できることとなります。こうした交流は、政府だけではなく、民間の方々と手を取り合ってやっていくことで初めて成果をあげることができます。その意味から、今後民間の皆様ともできる限り協力し合って、こうした交流を進めて参りたいと思っております。

Q:本誌読者へメッセージをお願いします。
 - 総領事館は、基本的には在留邦人の皆さんのためにあるものです。ただ、日本政府の行政機関の一部ですから、日本の法律・制度の下で行政サービスの提供を行なわなければなりません。しかし、こうした法律や制度といった制約はありますが、旅行者を含めた在留邦人の皆様方に、できる限りアドバイスを差し上げたり、必要に応じ支援の手を差し伸べたり、相談に乗るようにしたいと考えております。問題やトラブルに巻き込まれた際には総領事館にお越し頂くなり、あるいは電話やファックス、Eメール等でも結構ですが、ご連絡頂ければと思います。今後さらに、皆様方に気軽にご利用頂けるような、“より開かれた総領事館”になればと考えております。

 
 社会
  「第12回世界マスターズ水泳大会」に出場
歌手・女優 中尾ミエさん 本誌独占インタビュー

4月にパースで行なわれた世界マスターズ水泳大会。この大舞台に出場された中尾ミエさんは、200メートルメドレーリレーでは見事17位に輝き、さらに50メートル自由型にも参加された。中尾さんにとって、水泳の楽しさとは…。大会を終え、元気いっぱいに中尾さんは本誌独占インタビューに応えてくれた。

Q:いつから、水泳を始められたのですか?
  もう10年くらい前です。日本では毎年「ウーマンズ・マスターズ水泳競技大会」という女性だけの大会があって、それに出始めたのが10年くらい前。この大会は、毎年4千人くらい出場者がいるんですよ。高齢の方もたくさんいて、今回の世界大会に来ている日本人で最年長の方は94歳。すごいでしょ。私は、4年前のイタリア大会が初めての世界大会で、今回が2回目です。

Q:水泳を始めたきっかけは何ですか?
 水泳を見るのは好きで、泳げるようになりたいなと思っていたら、たまたま木原光知子さん(※)と会う機会があって、自分でもよく分からないんだけど、大会に出たいなと思ったんです。私はそういう目的がないとがんばらない性格だから、これはいいと思って。それから本格的に始めて、次の年から大会に出られるようになったんです。それに、“稽古ごとはせっかくお金をかけて練習するんだから、元を取らないと”って思うけちけち精神もあって(笑)。だから、やらざるを得ないっていう環境に自分を置かないと、続かないんですよね。
(※元水泳日本代表で、東京オリンピックなどで活躍。タレントとしても知られる。ミミスイミングクラブ代表・スイミングアドバイザー。昨年10月に死去した)

 Q:今回の世界大会の感想を聞かせて下さい。
 世界大会って、やっぱりお祭り気分もあるので楽しいですよ。あと、今回のパースもそうですが、こういう形でいろいろな国に行くのっていいなと思います。次の大会のスウェーデンにも、今回来ている友人は全員行くって言っていますね。それに大会に来ると、80歳、90歳と、上には上がいるじゃないですか。だから、全然自分なんかまだまだ若輩ものだわって思えるから、元気もらえますよ。今回出会った80代の方なんて、長距離を泳がないとメダルがもらえないと言って4種目も出ていたんです。本当に限りなく上の人がいるから、疲れたとかそんなこと言ってられないんです。本当に良いお手本がたくさんいる、いい環境ですね。

Q:練習はどのようにされたのですか?
 今は、今回一緒に大会に来ているコーチに習っています。本格的に習い始めたのは、3年前くらいから。それまでは、毎年タイムが縮んでいたんですけど、だんだんと頭打ちになって、これはもっときちんと教わろうと思って。

Q:お忙しい中で練習をするのは大変ではありませんか?
 他のスポーツに比べれば、道具もいらないし気軽ですよ。誰も関わらないし、都会の真ん中でスポーツクラブがあればいいし。それに、その気になれば忙しくても時間って作れるもの。だから、目的を持つことが、やっぱり大切なんですよね。

Q:水泳を通して、体や気持ちに変化はありましたか?
 私は元から健康だから、変化があったっていうのは分からないんだけど、今も健康でいられるっていうのは運動しているおかげだと思います。私たちの年代って長生きすると思うし、健康だけは自分で管理するしかないから、自分のできることはやろうと思って。あとは、競技に出てみたら、毎年タイムを縮めたいって思うじゃない。そのために今までやっていなかったストレッチとか筋肉トレーニングをすると、本当にタイムが縮むから、“がんばればまだこの年になっても、多少でも成長する部分があるんだ”と自信を持てるようになりました。もう年だからとか、もうできないとか、いろんなことにネガティブになるけど、そうやって数字で成長しているっていうのが分かると、“まだできるんだったら、がんばれるところまでがんばってみよう”と思えるようになったことが、いろんなことに影響していると思います。

Q:パースに来られたのは初めてということですが、印象はいかがですか?
 来る前に、皆がいいところだと言うから、すごく楽しみにしていました。1週間もいないからよくは分からないんだけど、高いビルも少ないですし、落ち着きますね。“これが自然な街だよね”と思います。空が360度見渡せるのって、当たり前のことなんだけど、都会にいると見えないですから。

Q:水泳をする環境はいかがでしたか?
  大会のIDカードを持っていると、バスでも電車でも、交通機関が全部無料なのは凄いなと思って。競技場も50メートルプールが3つもあって、その上、水球のプールとシンクロと飛び込み用のプールもありますから、“さすが水泳王国、すごく水泳に力を入れているし、整っているな”と思いました。

Q:今後の芸能活動のご予定を教えて下さい。
  この4月に、初エッセイ集「可愛いBa〜Ba」を出版しました。あと、秋には、私がプロディースして、介護をテーマにしたミュージカルをやります。

Q:なぜ、介護に焦点を当てたのですか?
  介護って、お年寄りや障害者の方だけでなく、健常者もどう接していいかを知らないと助けてあげられないですよね。いつか自分達も介護される側になるかもしれないし、介護される前にする側のことを知っておくべきだと思って。それに日本では、「介護=覚悟」とか、大変というネガティブなイメージしかないじゃないですか。介護する側も、体を壊すとか、仕事も辞めないといけないとか。そうではなくて、もっと皆が希望を持てる、それぞれが自立して自分たちも楽しめる世の中にしなくちゃいけないんじゃないかなと思って。だから、そんな難しいものではなくて、楽しくミュージカルにして、こういう方法もありますという提案ができればいいですね。これが上手くいったら、ライフワークにできればいいなと思っています。

世界マスターズ水泳選手権大会
2年に一度行われる、マスターズ水泳の世界大会。種目は25歳から5歳ごとに区分した年齢別で行われ、100歳までの幅広い年齢に渡って、競泳、ダイビング、水球、シンクロナイズドスイミング、オープンウォータースイミングの5種目の水泳競技がある。第12回大会は、2008年4月15日〜25日に、パースのチャレンジ・スタジアムで開催された。
PROFILE
1946年6月6日生まれ。歌手、女優。昭和37年に「可愛いベイビー」でデビューし、昭和史に残る大ヒットとなった。現在もコンサート、ディナーショー、テレビドラマ、映画、舞台など多方面で活躍中。趣味は、ソシアルダンス、水泳、書道など。
(中尾ミエ オフィシャルサイト www.nakaomie.comより)
 
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