しかし、石田はメディアを好んでいなかった。もちろん、理由に基づいた回避である。それなのに、メディアの一端を担う本誌のインタビューを計16回も受けてくれた。以前石田は「インタビューを受ける必要がないのなら、受けたくはない」とはっきり言っていた。当然、プロサッカー選手としての石田は本人の意思が反映されることなく、メディアへの露出が少なかったわけではない。移籍後間もなく当地の最大紙「The West Australian」の表紙を飾ったこともあった。そして、横浜FCの三浦知良選手がシドニーFCにゲストプレーヤーとして招かれ、石田のパースグローリーと対戦した時も「日本人対決」として、メディアからの注目を浴びた。シドニーで行われたその試合後、両選手は40人以上もの記者陣の矢面に立たされ、メディアへの露出をむしろ利用していた三浦選手と、メディアを遠ざける石田の相反する2人の所作が非常に興味深かった。

前から石田は、「もしも話」や「過去の話」には、あまり関心を示さなかった。いつも「今」を大切にしていたようだった。1年や2年の契約期間をベースにしてプレーする石田にとって、「もしもあの時、こうしていれば」といった仮定の話や、「こうしていれば良かった」といった過去の話は前進するためには邪魔になるのだろう。そして、いつも感心させられたことは、素早い決断力と行動力だった。これも、今まで己の力を信じて突き進んできたから故に、自然と身に付いたことなのだろう。習得や達成は年齢に関係ないものかもしれないが、はるかに石田は自分の年齢で養える以上のものを身に付けていた。