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現役新聞記者が、過疎化・少子高齢化が進む日本を追う

ムラの行方 藤井 満

Vol.185/2013/06

第14回「たたらの里の暮らし考(14)」


江の川沿いの都賀本郷の家並み かつて参道や境内に20軒以上の露店がならんだ

三江線の石見都賀駅から望む、江の川沿いの都賀本郷の家並み。

かつて松尾八幡宮の秋祭りには、参道や境内に20軒以上の露店がならんだ。竹燈籠によって秋祭りのにぎわいが戻った。


上野連合自治会を見習って周辺の都賀本郷、都賀西、長藤の各連合自治会でも次々に情報紙を創刊する。都賀本郷の連合自治会長も務める栗原さんは「最初は連合自治会といっても分かりにくかったが、情報紙などの力で連合自治会の活動が徹底してきました」と評価する。

 4連合自治会は月1、2回、情報交換する会を設けている。「このままじゃダメだ、外向けに何かやろう」と話し合う中で、「仏壇のロウソクが余ってもったいない。お盆にでも溶かして玄関先にともしたら?」という意見が出てきた。
 インターネットで検索すると、阪神大震災の追悼行事や大分県竹田市などで、竹灯籠を町おこしに活用している。山に繁茂する竹を使えば森林の整備にもなり一石二鳥だ。08年秋、切り出した竹で2,000本の灯籠を作って実現にこぎつけた。翌09年には町内外から500人が訪れ、露店も4軒ならんだ。
 2010年6月には、都会に出た人や都市住民に地域情報を発信するため、4連合自治会で作る「都賀・長藤地域協議会」のホームページを開設した。役場職員の立場で「竹灯籠」に関わる志村英文さん(54)は「井の中の蛙でいくらがんばっても、過疎で尻すぼみになるだけ。情報紙によって地域のレベルが上がり、ホームページで発信したい、外と交流したいという機運が盛り上がってきた」と話す。
 住民の力だけで過疎や高齢化を止めるのは難しい。だが、少なくとも旧大和村の手作り新聞は、山村に蔓延する「あきらめ」をぬぐう役割を果たしているようだ。


(つづく)



▽旧大和村

面積97.03平方キロ。その91.6%を森林が占める。1957年に、都賀村と都賀行村、布施村の一部が合併して成立した。2004年に邑智町と合併して美郷町になった。大正時代から戦後まで人口5,500人前後を維持していたが、高度経済成長後に過疎化が進み、2010年4月は1,761人、高齢化率44%。