第30話 「15分」

 何も出来ないままに1週間が過ぎてしまいました。
 TAXI会社からの報告でその後、2台の911カレラが上がったのですが、1台目と同じように調べた結果、何の関係も無いことがわかりました。
 僕は1人あせっていました。
 もう、MADISONが手の届かないところに連れ去られてしまっているのではないかという恐怖が、頭から離れなかったからです。薄暗い部屋の中で自由を奪われたMADISONが、けだもののような男達におもちゃにされている悪夢が何日も続いて、現れては消えていきました。それでも自分の気持ちの深いところは、決してぐらついてはいませんでした。そして、自分の中のテンションがピークに近い状態のままいたずらに時間だけが過ぎて行く辛さを、イヤというほど感じていました。ジェザとやるのなら早くやりたい、そんな“てんぱった”状態が続いていたのでした。

 

  
  「MORIO、たぶんこれだな。」
 夕方、TAXI会社からの連絡をメモしていたチャーリーは、驚くほど冷静な声で僕にそう告げました。
 「アレキサンドリアの海運倉庫の中に911カレラが1台、置いてあったそうだ。見つけたTAXIの運ちゃんは、たまたまそこにトイレを借りに行ったらしいんだが、その時の倉庫にいた連中の態度がちょっと変だったらしいんだな。」

 


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