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パースエクスプレスVol.140 2009年9月号

 一方、太地町の漁野副町長は、「我々の姉妹都市関係は1981年に始まり、これまで親密な関係を保ってきただけに、今回のブルーム市議会での決議は信じがたいものである」とし、更に「漁師のイルカ捕獲を止めさせる権利は、地方自治体にはなく、こういったことは県や政府が決定することである」(※3)と述べている。太地町にしてみれば伝統的なイルカ漁であるが、他国から見れば、単なる動物虐待行為としか映らないだろう。海がイルカの血で真っ赤に染まった捕獲シーンを見せられれば、誰もが目を覆いたくなるはずだ。映画の見方によっては、イルカを叩き殺す日本の悪玉漁師の醜態としか受け取れないかもしれない。しかし、漁師にとってイルカは自分達の仕事場である漁場を荒らす悪玉になっているのだろう。イルカを漁場から逸らす工夫はないのかとも思われるが、この場所が古くからイルカの回遊路となっているため、イルカ漁が伝統となった。しかしながら、これはイルカや鯨を溺愛する欧米諸国からみれば許されない行為ととられてしまう。

 ブルームに長く暮らす日系人女性(69)は「自分の夫は太地町出身だったが、最近は両町が姉妹都市関係を保つことに意味を感じていない。それよりも、こういったことで、日系人が差別を受けることの方が心配だ(※2)」と述べている。何も無理に姉妹都市関係を保つ必要はないということだろう。最後に、太地町のイルカの捕獲に激怒するブルーム鯨類調査官のCostin氏が「イルカや鯨の感情や知能が我々人間とほぼ同等であることに疑いはない(※2)」といったコメントを残したが、これに何か特別な意味を感じてしまうのは筆者のみであろうか。

<筆者のプロフィール>
東京生まれの元祖ワーホリ。日本企業のエンジニアを辞職し、日豪で計3年間の修行の後、日本語教師となる。パース在住15年、日本語教師歴11年。ペンネーム「ブッシュウォーカー」。