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最近見た映画の一本にあの日本でも大人気だった「Amelie/アメリ(2001)」のAudrey Tautou(オドレイ・トトゥ)が主演した「Dirty Pretty Things(邦題:堕天使のパスポート)」がある。個性の強いフランス人女優が演じた役柄は、ロンドンのホテルで働くトルコ移民女性。映画の内容は、移民社会のロンドンにスポットを当て、2人の違法移民の現実をリアルに描いたヒューマンストーリーだったが、“アイデンティティとは何か?”を上手に問題定義した映画でもあった。

そして、その映画を観た数日後、ある記念式典に出向いた時のこと。その会場の上座にエリザベス女王の写真がご立派な額縁に納められ、壁に掛けられていた。そして、なんとその下に仮設で作られたステージ上で日本人婦人が中心で結成されたコーラスグループが、オーストラリアの国家を歌い、そして日本古謡の“さくら さくら”まで日本語で合唱してしまった。

ここオーストラリアは、米国や英国と同様、移民の国である。肌の色も様々であれば、使っている言語も本当にいろいろである。しかし、入植の順序の差で今は英語を共通語とし、優劣や強弱の差をその順序の差で強要されることもある。それにしても、Audrey Tautouは、なぜ自分の国の国籍を捨て、他所の国のパスポート取得を懇願したのか? また、エリザベス女王の前で日本人コーラスグループが、なぜオーストラリア国家を真顔で熱唱したのか?

私は、日本人の両親を持つ日本人だから、この2つの疑問には一生応えられないような気がしているのだが…。

パースエクスプレス編集長
今城 康雄
2004年6月22日