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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.219/2016/04

第21回「オーストラリアと日本のヒエラルキー」


 本誌お膝元のパースグローリーは、今シーズンは上位争いを繰り広げており、今後のファイナルシリーズも楽しみです。さて、先月は「ビッグクラブ」についてお届けしましたが、それではそれ以外のクラブはどのような立ち位置になるのでしょうか?早速、問題です。

【Q】AリーグやJリーグが発展するためには、「ビッグクラブ」の誕生が望まれますが、それ以外に何が必要となるでしょうか?

【A】明確なヒエラルキー(階層)を作ることが、リーグの発展につながると筆者は考えます。

 オーストラリアのAリーグや日本のJリーグには、いまだ「ビッグクラブ」が存在していませんが、それと同様、筆者の理想的なリーグとは、ヒエラルキーが存在することです。そのヒエラルキーとは、以下のようなものと考えられます。


  「ビッグクラブ」
リーグに2〜3クラブ存在する。
  「中堅クラブ」
10年に一度くらいの頻度で、リーグ優勝を果たせる4〜5クラブ。
  「下位クラブ」
上位クラブへの選手売買で経営が成り立つ下位階層クラブが4〜5クラブ。


 「ビッグクラブ」は、先月号でも提案しましたが、経済的にも歴史と実績でも他クラブを圧倒するような存在感があり、他クラブのからの羨望と嫉妬を受けなければなりません。当然、下位階層クラブから選手を搾取する立場となります。このクラブの実績が、クラブのみならず、その国のリーグのイメージ作りをすると言っても過言ではないでしょう。そういった意味では、時にはヒーローとして、時にはアンチヒーローとして存在できなければならず、そのプレッシャーに耐えられるクラブです。

 「中堅クラブ」は、中位階層の立ち位置となり、ダークホース的な存在でもあり、ビッグクラブと同じように下位階層クラブからの搾取を行いますが、選手育成も上手く、ビッグクラブから搾取されます。それまでの実績の比較により、ビッグクラブに成り切れないクラブとも言えますが、いつもビッグクラブへの野心を持ち続けられるクラブです。

 「下位クラブ」は、経済的にも実績でも、ビッグクラブや中堅クラブに遠く及ばず、リーグへ継続して残留することを目標にするようなクラブです。所在は、大都市圏ではない地方となり、選手達の育成に定評があり、継続して好選手を輩出し、経済的サイクルを上手く循環できるクラブとも言えます。

 さて、この「ビッグクラブ」、「中堅クラブ」、「下位クラブ」のそれぞれの階層間での理想的な関係は、各クラブが自らの存在意義を理解し、そして各階層間で需要と供給がマッチしあい、自給自足で成り立っていた大昔の日本リーグのように、全てがリーグ内で完結できることだと思います。

 しかし、中には「現在のように、どこのクラブが優勝するか分からない拮抗したリーグの方が面白い」と思う人もいるでしょう。それが、相当なレベルで行われている競争であればよいのですが、そうでない場合はそれ以上の発展が望めません。当然、安定した関係は時に停滞を招き、発展の弊害にもなるため、“下克上”やビッグクラブの対局である“アンチの存在”がカンフル剤として必要だと考えます。そう言った意味では、欧州メジャーリーグやその他、サッカーが盛んな国のリーグは、そのようなことの繰り返しの歴史を刻んでいます。両リーグは、今後10年、50年、100年と歴史を重ねていく以上、停滞を伴う安定ではなく、新たな刺激を供給し続けねばなりません。リーグの土台となる安定した実績を残すことのできる「ビッグクラブ」と、それに追随するそれ以外の「中堅クラブ」や「下位クラブ」の線引きは必要となるでしょう。

 Aリーグは、ようやく10年と言う節目を超えたばかりで、当然、飛び抜けた実績を誇ることのできるクラブはありません。皆が「中堅クラブ」の階層であり、全てのクラブが「ビッグクラブ」を目指していると思います。逆に、「下位クラブ」を自覚するクラブは、まだ存在しないのかもしれません。一方、Jリーグは20年を超え、Aリーグに比べれば中途半端は階層にいるクラブが存在するかもしれませんが、Aリーグと同じ様に飛び抜けた実績と存在感のあるクラブは未だ存在しないと思います。 さて、近い将来、両国のビッグクラブはどのクラブがなるのか、皆さんもぜひ注目してみてください!。

 両リーグが、筆者が考えている理想的なリーグとなるためには、最低でもあと20〜30年は必要でしょう。そして、今後、両リーグが今以上に盛り上がるためには、このヒエラルキーが明確であることが必要不可欠だと考えます。