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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.218/2016/03

第20回「オーストラリアと日本のビッグクラブ」


 日本では、Jリーグの新シーズンが始まりました。補強面では目新しい驚きはありませんでしたが、新たに就任した監督はかつての日本代表戦士世代が増えました。そういう視点では、今後の展望が楽しみです。さて、恒例の問題です。

【Q】読者の皆さんにとって、AリーグやJリーグにおける“ビッグクラブ”とは、どのクラブが挙げられますか?

【A】は思いつきません。ただ、将来的にはAリーグではシドニーFC、メルボルン・ヴィクトリー、ウエスタン・シドニー・ワンダラーズが候補に上がります。Jリーグでは、浦和レッズ、名古屋グランパス、ガンバ大阪あたりが該当してくれるのではないでしょうか。

 それでは、ビッグクラブの定義とは、どんなものなのか?筆者が思いつくものとして、
(その1)その国の首都や大都市圏を本拠地とする
(その2)経済的基盤が大きい
(その3)リーグやその他大会での実績が飛び抜けている
が挙げられます。

 まず、(その1)ですが、やはりその国を代表するための格を備える必要であり、より人口が多い都市であれば、サポーターやファンを抱えやすいためです。シドニーの人口は、約480万人。国内のみならず国外に対しての大都市イメージも大きく、シドニーFCやウエスタン・シドニー・ワンダラーズは、ビッグクラブとしての素質があると言えます。メルボルンの人口は、約440万人。シドニーに比べれば国外に対する都市部イメージは低いかもしれませんが、素質は十分です。

 一方、浦和(さいたま市)の人口は、約120万人。首都東京のベッドタウンとして、現在も人口が増えている都市です。名古屋市の人口は約230万人。世界的な企業を地元に抱えている大都市です。大阪市の人口も約270万人。昔からの商業都市です。こちらも素質として問題ないでしょう。

 この「世代」とは、結果として集められた選手達のネームバリューが、どの程度かによってマスコミやサッカーファンから評価されてしまう一面があります。今回のこの代表は、そういった意味で選手達のネームバリューが低い世代でした。

 次に(その2)ですが、各クラブのスポンサーからの営業収入や入場料収入、放映権収入の規模にさほど差はありませんでしたが、今後の展望として都市部の方が収入を得やすいことを考えると、必然的に(その1)と関連してくるのでしょう。

  そして、 (その3)において、名を挙げた各クラブは今までリーグ(レギュラーシーズン)優勝経験があり、AFCチャンピオンズリーグでもそこそこ実績のあるクラブです。しかし、リーグの歴史が浅い両国にて、飛び抜けた実績を誇るクラブはありません。世界的なビッグクラブは、特にリーグ優勝経験が多く、他を寄せ付けない実績を誇っているので、今後、その点をそれぞれのクラブには期待したいところです。

 簡単にまとめますと、地元の人口が多く、優良な企業を多く抱え、それらが良い循環を起こし実績を重ね続けることができるクラブが、将来のビッグクラブとしての素質があるということになります。

 これは余談ですが、(その1)の条件では、両国の首都クラブが該当しても良さそうですが、候補には挙げませんでした。オーストラリアは首都のキャンベラにAリーグクラブがそもそも存在しませんが、日本でしたら東京には複数のクラブがあります。筆者は、かつて世界の首都クラブが、なぜビッククラブになれないのか不思議に思い、調べたことがありました。理由は、国の首都は政治や経済の中心で、根っからの地元民よりも地方からの流入民が多く、まとまりに欠けるからといった結論に至りました。欧州のメジャーリーグで、首都クラブがビッグクラブであると言えるのは、スペインのレアル・マドリッドくらいだと思います。

最後に、筆者の考えるビッグクラブで、(その1〜3)以外に
(その4)自前の大規模なスタジアムを持っている
(その5)国の代表チームへの選手供給源である
(その6)選手達の終の住処として存在できる
などもありますが、歴史的にも経済的にも他を寄せ付けないビッグクラブの存在は、やはり両国にも必要でしょう。ビッグクラブへの羨望と嫉妬が、他クラブのモチベーションにもつながり、「あそこだけには負けたくない」といった思いが、リーグ全体の発展にも関係してくるからです。

 さて、近い将来、両国のビッグクラブはどのクラブがなるのか、皆さんもぜひ注目してみてください!