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リレー小説
Vol.228/2017/1
第7回

【前回までのあらすじ】
沢田百々子、30歳。新しいパースでの生活が始まろうとしている矢先に、一人の男が百々子の前に現れる。その男とはサンフランシスコで会っていた男だった。

第9走者
筆者:ミケ


 百々子は、バックパッカーに戻って自分のベットに腰を掛け、もう一回、スマホでサンフランシスコの時の写真を見返した。何度見ても、さっきHay Streetで会った男とその男は一緒だった。その時、中庭から女性の叫び声が耳に入った。なぜかとっさに部屋を出て、中庭に向かった。そこにいたのは日本人の女の子で、うずくまるようにひざを抱えて、泣きながら震えていた。

 受付のガブも駆けつけていた。ガブが、「Tell me what happened!」と慌しく聞いても、女の子は恐怖のあまり、英語がうまく出てこないようだった。ガブは、私に通訳するよう頼んできたが、女の子はしゃべれる状態ではなかった。「男が…」と一言だけ。

 次の日ガブから、あの後彼女を落ち着かせ、状況を聞いたところ、いきなり後ろからもの凄い力で突き飛ばされ、振り返った時にはほんの僅かな後姿しかなかった、と聞かされた。その僅かな後姿は“男だった”ということだけははっきりしている。そして「恨み絡みでのことじゃないかなぁ。毎晩、Northbridgeのナイトクラブに行って、派手にやっていたようだからな、彼女。金回りも良さそうだったし」と意味深なことも付け足した。

 バックパッカーズに滞在している日本人はほんの数人。シェアの方が安いからという理由で、もう何年も前から日本人はみんなバックパッカーズに泊まらなくなっている、とガブが言っていた。そんな中でも、ここのバックパッカーズには、昨日被害に遭った女の子や私、そしてHay Streetで会った男が滞在している。ちなみに、その女の子を数回、キッチンで見かけたことがあった。ずいぶん薄着だな、という印象で覚えていた。


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