パースエクスプレスVol.114 2007年7月号

「自らを救う合理性」

  6月の半ば、ビルマ(ミャンマー)国内で10年以上援助活動を続けている人(在ビルマ10年、34歳)にインタビューする機会があった。軍事独裁政権国家下ビルマでの仕事だから、その苦労も並大抵なものではない。地元の人を対象にした支援活動をやりすぎると、本来なら政府が担う仕事を肩代わりしていることになるから、軍政府の面目を潰すことになる。だからといって、活動内容を控えてしまうと、ビルマ国内に留まる必要性がなくなる。軍政と、ほどほどの距離を取りながら、どのようにビルマに関与をし続けるのか。その見極めは難しそうだ。  
インタビューの最後の方になって、その人から反対に、「あなたこそどうして、こういうむちゃくちゃな国で取材を続けているのですか。そのエネルギー源はどこにあるのですか」と尋ねられた。 う〜ん、実は、自分でもよくわからない。それが正直な答えである。実のところ、インタビューをする数日前、ラングーン(ヤンゴン)市内で知り合いと話をしていて、「いつ頃からビルマで写真を撮るようになってきたのか」という話になった。  「よく考えてみたら、ビルマに初めて来た時、まだ29歳だったんだ。あれから15年も経ってしまった」。自分自身の、そんな発言にさえびっくりしてしまった。

 
スーチー氏の誕生日を祝うためNLD党本部前の集まった人びと。激しい雨が降り続く中、全身びしょ濡れになりながら佇み続ける。

 今となっては、ビルマに関わっている明確な理由を挙げることは簡単ではない。軍事独裁の社会よりはまだ民主主義社会の方が良いから、とか。ちょっとでも風通しのよい社会になるのに一役買いたいから、或いはできるだけ公正な社会になって欲しいから、とか。自分でも赤面してしまいそうな、そんなはばったい言葉しか浮かんでこない。字面では、いくらでも言葉を飾ることができるが、それでは何かしっくり来ない。  実は、同じような問いかけは昔から、周りの人から随分と投げかけられていた。でも、自分は何故か、もごもごとしか返答できなくて困ってきた。
 

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