パースエクスプレスVol.113 2007年6月号

「ビルマのムスリム」

 「それでは、究極の質問。2つに1つの答えだよ。軍事政権とムスリムのどちらかを選ばなければならないとしたら、さて、どっちを取る?」  彼は一瞬、唖然とした顔つきになる。今度は30秒ほど考え込んでしまった。  自分の考えを自分で確かめるようにゆっくりと口を開いた。「確かにビルマ軍事政権は嫌いだけれど、彼らは同じミャンマー人だし。う〜ん、困ったなあ。どうしても答えを出さなければならないとしたら。仕方ない。ムスリムよりも軍事政権をとるよ。」  びっくりした。それほどまでムスリムが嫌いなのか。この返事が気になり、後日、別のビルマ人女性1人、男性1人に同じ質問をしてみた。が、その答えは同じだった。  「軍事政権は嫌いだけれど、ムスリムはもっと嫌いだ。自分の宗教中心だから」という答えだった。敬虔な仏教徒であるビルマ人らしい答えだ。ビルマの人は、経済的な支配を受けている中国を嫌っているが、それ以上にムスリムを嫌っている印象を受けた。

 仏教徒の僧侶とムスリム教徒がぶつかり合って負傷者が発生、というニュースを聞くことがある。生活苦に陥った人びとの不満のはけ口をそらすために、軍事政権がムスリムの存在をスケープゴートにして問題を起こしている、という人もいる。だが、ビルマ国内をあちこち動き回って、人口の4パーセントのムスリムの存在をどこでも大きく感じた。ビルマ人の生活感覚を通してのムスリム嫌いを感じてしまった。  民主化問題、民族問題に加えて、何かの弾みに宗教が大きな問題にならなければいいのだが。

   

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