「歴史に翻弄される人びと」

 ビルマにおける新年は4月中旬、乾期の終わり近くにある。それゆえ、1月1日はとりわけ特別な日ではない。西暦を使わない社会の1月1日は本来、そうあるべきだろう。しかし、そうだと分かっていても、前日と全く何も変わらない1月1日を迎えると、拍子抜けしてしまう。市内を走るバスはいつものように混雑し、路上の物売りは所狭しと商品を並べている。ビルマの下町の商業地区は、普段と何ら変わりない喧噪が渦巻く。そんなビルマを出て、タイに入って数日経った。今は、首都バンコクを経由し、ビルマ国境が近い、タイの町メソットというところに滞在している。2002年10月から、出たり入ったり、ビルマでの滞在は1年を超えた。 今日1月10日は、タイでは「こどもの日」。しかし、全人口15万人のうち、ビルマ人の人口が半分を占めるメソットでは、子どもの日の雰囲気は、それほど感じない。 国境地帯ではこの時期、空気は乾燥しきっている。朝晩は冷え込むが、日中は突き刺すような太陽光がふり注ぐ。もっとも、ここ数日、曇り空が続いている。ちょっと肌寒い中、何人かの友人に会うため、メソットの町を西に向かってバイクを飛ばした。


 「何言ってんだ!」 9ヶ月ぶりに会ったビルマ出身のカレン人LM(60)は、想像以上に激高した。私の、「いよいよ変わるんだな」という一言が引き金だったようだ。いつもは流ちょうな英語を話す彼の話は、気が荒くなると、何を言っているのか、全く分からなくなる。目をつり上げ、あたり構わず唾を飛ばし続ける。彼とは12年のつきあいがあるが、相変わらず気の短い闘士のようだ。

 

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