Vol.163/2011/8
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ビルマ(ミャンマー)の夏は暑い。雨傘も日傘代わりとなる陽の強さである。夏の真っ盛りである4月には気温46度を記録した(2010年度)。 |
ビルマ(ミャンマー)女性の多くは今でも、顔に「タナカ」という白粉を塗っている。これは東南アジア諸国の女性の間に残っている、なかなか興味深い風習であろう。そのタナカとは、柔らかい香りを放つタナカの木をすりつぶして粉にしたものだ。ビルマにおいてタナカは、女性たちだけでなく、子どもの多くも顔に塗るほどポピュラーなものでもある。
どうしてビルマ女性はタナカを使うのか?
それは、顔にタナカを塗るとヒヤッとして涼気を誘い、ビルマ特有の暑さ対策(日よけ、日焼け止め)のためだという。上ビルマ(北ビルマ)でよく見た光景だが、炎天下で田植えしている集団を見つけると、まずそれは女性たちの姿だったりした。それにタナカを塗るということは、個人的な印象だが、ビルマ女性の身だしなみでもあるようだ。
しかし、である。どうしてビルマという国にだけ、今でもこんな伝統が生き残っているのだろうか。
その理由のひとつには、政治的に軍事政権体制が長く続いて国を閉ざしていたため、ビルマ社会独自の伝統を受け継ぐことになってきたのであろう。ちなみに、男女区別なく、ロンジーと呼ばれる巻きスカートが残っているのも、同じ理由であろうか。
ビルマの人口はおよそ5,500万人。その大半を占めるビルマ人(ビルマ民族)には、家族を現す苗字(氏:family name)がない。個人を示すのは、名前だけである。例えば、ビルマ人で、しかも女性で一番有名な「アウンサンスーチー」というのも、長いけれど名前だけである。
ビルマはまた基本的に母系社会で、男性と女性が結婚した後は、男性が女性の元へ婿に入るというのも珍しくない。そのため、家庭生活をやりくりする主が女性の場合もあり、財産分与などでも、他のアジアの国に比べて(あくまでも比較の問題であるが)女性の地位は高いとも言われている。
東南アジアのタイやビルマは「微笑みの国」と表現されることがあるが、日常生活においては、ただただ微笑んでいるだけでない。普段の暮らし、例えば市場での売り買いのやりとりを見ていると生活力の強さを感じてしまう。