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[第1節] 自分の信じた道へ

最初に断っておくが、本新連載ではパースにいる石田博行ではなく、サッカー選手の石田博行にスポットをあてる。

いちじくの木に降り注ぐ強い日差しは、もう5月、秋だというのに真夏のそれを思わせるほどだった。すっかりオーストラリア時間が体内時計に組み込まれてしまったのか、Members Equity Stadiumの駐車場に到着したのは、待ち合わせ時間より5分を過ぎてしまったところだった。
 「今年からHyundaiがメインスポンサーなので、この車なんですよ」
 待っていてくれた彼は、ハッチバックのトランクを開け、練習用具が詰め込まれているスポーツバックをミネラルウォーターのペットボトル10本の脇に置いた。

スワン川沿いにあるカフェは、平日のランチタイムにもかかわらず、客で溢れかえっている。オフィス街の雑多なランチカフェに比べれば、光を受け、輝く水面を望みながらの食事の方がはるかに良いに決まっている。オープンテラスに設けられたテーブルに腰を掛け、メニューに目を通す。何の迷いもなくパスタを選び、オーダーをする。そして「さぁ始めましょうか」といった感じで、石田博行は顔を上げた。