日本チームを牽引する、2つのパワーである監督とキャプテンに、大会に向けたインタビューを行った。
向井昭吾 監督
PROFILE
むかい・しょうご●1961年、愛媛県生まれ。
全日本で活躍後、1994年より東芝府中の監督を5シーズン務める。東芝府中監督時代には日本選手権3連覇を達成し、2001年に全日本監督に就任。昨年行われたワールドカップ・アジア予選では見事全勝し、本大会への切符を手に入れた。日本協会強化委員会副委員長。
箕内拓郎 主将
PROFILE
みうち・たくろう●1975年、福岡県生まれ。
2002年より全日本に参加。全日本1年目からキャプテンを務める。関東学院大学4年生の時にキャプテンとして日本一を経験。イギリスの名門大学オックスフォードへの留学やイタリアでのプレーなど、海外での経験も数多く積んでいる。NEC所属。

今回のワールドカップに照準を合わせ作り上げた、日本代表チームの特徴を教えて下さい。

2001年から我々は「スピードアタック」というコンセプトのもとにチームを作ってきました。ラグビーのプロ化が世界的に加速していくなかで、日本人が海外の強豪と戦うためには、日本人の特性である俊敏性を最大限にいかすことだと。フィットネスと俊敏性に優れた選手たちを日本代表として今回のワールドカップに向けて選びました。
箕内主将にとってラグビーの魅力とは何ですか?

やはりスポーツのあらゆる要素がラグビーに含まれていることです。ボールを持って走るランニング、ボールを投げたり、蹴ったりするテクニック、そして相手をタックルしたり、タックルを受けたりするコンタクト、そうしたスポーツの面白さが全て揃っているものがラグビーだと思います。
監督自身、第1回ワールドカップをオーストラリアで経験されていると思いますが、その時のワールドカップの印象はどのようなものでしたか?

当時はまだ世界のラグビーそのものがプロ化されておらず、初めてのワールドカップということで、大会全体に手作り感がありました。それから情報分析も、医療技術に栄養学などもそれほど発達していなかったので、どの国の代表チームも体一つで試合に挑んでいた、という気がします。
箕内主将にとって初めてのワールドカップとなりますが、今大会における意気込みを教えて下さい。

個人的には非常に楽しみにしています。恐らく参加国の選手はみんなそう思っていることでしょう。なにしろ4年に1度の世界チャンピオンを決める大会ですから。その最高の舞台で自分の力を試したいと思っています。
今回、ワールドカップへは監督として参加されるということで、16年前とは違った思いがあるかと思います。今大会への思いを聞かせて下さい。

私自身が選手として第1回ワールドカップに出場した場所がオーストラリア。そして今回は監督として出場するわけですが、そのホスト国がオーストラリアということで、何か非常に運命的なものを感じます。この16年間にラグビーを取り巻く環境は大きく変わりました。したがって、私がプレーしていた時のワールドカップとは全く別物だと思っています。イングランドやオーストラリアなどのラグビー強豪国はプロ化容認となった1995年以前からその準備をしており、私が監督に就任した2001年から日本選手のセミプロ契約が始まりました。世界の流れに遅れていることは否めませんが、プロだからすぐに強くなるというわけではない。日本の特徴を是非、海外の強豪相手に見せたいと思います。
キャプテンとして、チーム内での役割をどのように考えていますか?

自分自身ではキャプテンだからという特別な気負いはありません。それに国内の最高の選手達が集まった集団が日本代表ですから、いちいち何かを指導する必要もありません。みんなの士気が上がるような体を張ったプレーを一番最初にする、それが私なりのキャプテンとしての役割だと思っています。分かりやすく言えば、一番最初に痛いことをする、ということですね。
南半球でのワールドカップということで、日本と逆の季節での試合となる訳ですが、選手の体調管理等で特に気を付けていることはありますか?

やはり暑さ対策です。我々は今年の3月に実際に試合をするタウンズビルとゴスフォードに長期遠征を行いました。とにかく暑い。ドクターと栄養士と相談しながら、体調管理をしていくつもりです。試合は夜なので、その時間帯に最大限のパフォーマンスができるように生活のリズムをオーストラリアに到着してから確立したいと考えています。
予選プールBでは、フランス、スコットランド、フィジー、アメリカと、全てIRB世界ランクの上位チーム(8月3日現在)と戦うことになりますが、それぞれのチームに対する現段階での印象を教えて下さい。

フランスは大きなFWを中心としたパワフルなラグビーを展開してくるでしょう。スコットランドはキックを多用した手堅い試合運びをしてくる。フィジーは昔と違い、ランニングラグビーではなく、フィジカルなラグビーに変わってきています。アメリカは5月に試合をしましたが、大きいだけでなく、スピードもあります。
監督として、勝敗以外にチームに望むことは何でしょうか?

難しい質問です。やはりワールドカップは4年に1度の世界最高の舞台。ワールドカップは最初から最後まで勝敗にこだわりたいというのが本音です。それ以外に選手たちに望むものはありません。しかし、選手生活を終えた一人のラグビー選手という立場に私を置き換えた場合、異国の地で体を張って海外の強豪と闘った仲間との思い出は一生ものです。ですから、選手たちには今回のワールドカップが終わった後も連絡を取り合う間柄になってほしいと思います。「またこのメンバーで試合がしたい」と言えるようなチームになってくれたら嬉しいですね。
予選リーグを突破すると、前回ワールドカップ覇者・開催国オーストラリアチームと対戦する可能性も出て来ますが、オーストラリアチーム、並びに選手の印象を教えて下さい。

6月にオーストラリア代表の2軍にあたるオーストラリアA代表が来日し、2試合行いました。15人全員が機能的、かつ合理的に動くラグビーでした。一人一人が役割を理解して80分間動く、そういう印象を受けました。
最後に、今大会の目標を教えて下さい。

予選プールで2勝することです。我々のプールBにはスコットランド、フランス、フィジー、アメリカがいます。どの対戦国も簡単に勝たせてくれる相手ではありません。しかし、日本人が持つ忍耐強さと、あきらめない粘りを80分間グラウンドで見せてくれれば、必ずチャンスは来ると信じています。応援のほど宜しくお願いします。
過去に海外(イギリスやイタリア)でプレーされたご経験をお持ちですが、将来、ラグビー強豪国オーストラリアでのプレーは考えていますか?

今は特に考えていません。確かにスーパー12というオーストラリアのチームも3つ参加している世界最高のリーグは魅力的ですが、今は日本代表のことで頭がいっぱいです。
最後にチームキャプテンとして、または1プレイヤーとして今大会の目標を教えて下さい。

監督と同じく、予選プールで2勝したいと考えています。日本は過去にワールドカップで1勝しかしていない。その壁を自分たちの力で越えたい。確かにスコットランドもフランスもフィジーもアメリカもプロ化によって、かつてないほど強化が進んでいます。だからこそ、やりがいがある。是非、ご声援のほど宜しくお願いします。
 
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