[第1節] 自分の信じた道へ

彼のこの言葉には、圧倒的な説得力があった。そして、この『がんばろう』という言葉を純粋に受け止め、心地よい気持ちにさせられたのは久しぶりのような気がした。なぜなら、15歳の時に抱いたプロへの思いをこの『がんばろう』が支えている、実際にモノにしている証だと思ったからだ。

斜陽ですっかり建物の影が長くなった頃、来週の撮影日程について打ち合わせを切り出した時だった。
 「5月11日の試合は大切なんです。自分にとっても、クラブにとっても。来週はその試合に向けて集中力を高めていきたいんです。撮影はお断りできないでしょうか」
 石田の眼は自分のテリトリーを脅かす外敵を追い払うかのような眼差しだった。彼にとって5月11日は、パース・グローリーとのプロ契約後、最初の公式戦となる。

(文責 今城康雄)

石田 博行
1979年8月31日生まれ、神奈川県出身。中学卒業後、単身ブラジルへ。3年の後帰国し、Jリーグ、シンガポールのSリーグとプロ契約。2001年にシドニーのオリンピック・シャークスに移籍。主力選手としてチームの優勝、準優勝に貢献。2004年にパース・グローリーと契約。172cm、64kg。

 

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