パースエクスプレスVol.140 2009年9月号

 国際親善を目的に、多くの国々の都市が他国の都市と姉妹都市提携を結んでいる。オーストラリアの多くの都市も他国の都市と姉妹都市提携をし、良好な関係を保っている。日本の都市との提携は、シドニーと名古屋市、パースと鹿児島市といったものが挙げられるが、その他、町レベルの姉妹都市関係も多々ある。しかしこの度、イルカ漁をめぐり、姉妹都市関係である西オーストラリア州北部の町、ブルームと和歌山県の太地町との関係が危機に陥っている。今回はこの問題について探ってみよう。

 パースから北へ約1,700キロ離れた海辺沿いにブルームという町がある。この町は古くから真珠産業で栄え、19世紀の末、日本の和歌山県から多くの真珠獲りダイバーがやってきた。彼らの出身地の多くが太地町であったという歴史もあり、1981年にブルームと太地町は姉妹都市関係を結んだ。しかし、この度、「ブルームは、感情に支配された特別会議の後、年間2千頭ものイルカを殺戮する日本の漁港町との姉妹都市関係を停止する決議を下した(※1)」という結果に至った。ことの始まりは、和歌山県太地町の沿岸で行われたイルカ漁を環境保護活動家グループが極秘で撮影し、ドキュメンタリー化した『The Cove』という映画だった。ブルームは、大量のイルカが捕獲されるシーンが続くこの映画を観た者から多くの抗議や嫌がらせのメールを受け、太地町との関係を断つ旨のプレッシャーを掛けられた。ブルームのCampbell市長は「太地町のブルームに対する歴史的な多大な貢献と、多くの人々に受け入れられない(太地町の)風習とをどう比較検討できるのか(※2)」といった難しい状況を述べた。

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