パースエクスプレスVol.139 2009年8月号

 『世界の住みやすい街』としてオーストラリア国内の幾つかの都市が上位にランキングされている(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット調べ)。海外からも注目され、旅行者のみならず、勉強するのに適した場所として多くの留学生もやって来る。日本からも英語学校を初め、大学、各種専門学校に留学生として来て、籍を置く人も多い。こんな留学先として人気を誇るオーストラリアだが、意外な盲点があった。7月下旬、シドニー内の私立専門学校が突然倒産、閉鎖し、多額の授業料を前払いしている留学生たちが混乱に陥った。在籍する多くのインド人留学生は怒りを抑えられず、政府に抗議するところまで発展した。留学生にとっては滞在ビザにも関わる事件だが、今回はこの問題を考えてみよう。

 海外に勉学の地を求め、期待に胸を膨らませていたのも束の間、突然の学校閉鎖で途方に暮れる留学生の失望感はいかなるものだったのだろうか。筆者が知る限り、ここパースでも私立の英語学校、各種専門学校の倒産が過去に数件あった。ここの学校経営はそれほどいいかげんなものなのかと疑ったこともあったが、この度、「閉鎖されたシドニーの専門学校の数百人もの留学生が、この学校を『詐欺的教育機関』と表現したり、『教育産業における規定不足』と非難したりし、オーストラリアの海外での名声にダメージを与えた(7月29日、The Australian、online)」といった事態となった。ドアに張られた通知だけで、学校の閉鎖を知らされた学生たちからこういったコメントが出るのも当然だろう。ブリスベンにも分校を持つこの私立の専門学校には、英語、金融、ホスピタリティーといったコースがあり、500人以上の学生が在籍していたという。規模から考えても突然の倒産、閉鎖は信じがたいものである。多くの学生は他の専門学校への転校を余儀なくされているが、生徒の中には、コースは同じであっても科目が異なれば意味が無いと憤る者もいる。政府機関によると、ビクトリア州だけでも『ハイリスク』に該当する私立校が17校あるというから驚きだ。きれい事ばかりが並べてあるパンフレットでしか学校を知らない留学生に、学校選びに慎重になってほしいものだ。ちなみに、オーストラリア政府はこのような倒産事態となった場合、代わりの学校を手配するか、授業料の払い戻しを行う、といった措置を取るということである。

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