パースエクスプレスVol.128 2008年9月号

歩くことが健康に良いということは、誰もが承知の事実であると思う。では、なぜ良いのかというと、体の代謝を活発にし、血液の循環を…、といった肉体機能の活性化といったものが上げられるはずだ。しかし最近、ここ地元の西オーストラリア州立大学の研究により、世界で初めて高齢者の記憶力の改善に効果があることが発見された。この発見は、これから高齢化社会になりつつある世の中に大いに貢献すると期待されているが、一体どういったことなのか、その内容を紹介しよう。

歩くことは、人間の日常生活の基本であるはずだが、文明の発達とともに人間はしだいに歩かなくなり、同時に様々な現代病が蔓延するようになった。歩くことが健康に良いのは分かっていても、便利な生活に慣らされてしまっているので、必要最低限しか歩かなくなってしまったのが、今日の人間の姿ではないだろうか。足が弱ると老化が進むと言われているが、この度「歩行は肉体的な健康を増進するだけでなく、脳の老化を抑える効果もあることが世界で初めて、西オーストラリア州立大学の研究で明らかになった(9月3日、The West Australian、on line)」という内容に至った。記憶障害を持つ50歳以上の患者170人を18ヶ月にわたり調査した結果、平均20分以上の歩行などの適度な肉体活動を毎日続けた患者において、認識力や記憶力が改善したという報告である。主任研究員のニコラ・ローテンシュラガー教授は、「適度な運動が心臓の健康維持に重要なのはすでに承知のことだが、将来的には脳の老化防止のために運動をすることが薦められるようになるかもしれない」と述べている。同教授によると、記憶力テストでの効果は明らかであり、軽度の認知障害患者に対しては、以前に試したアルツハイマー用の医薬品よりも良い結果が出ているとのことである。まあ、簡単に言ってしまえば歩くことは、アルツハイマーや痴呆の予防と治療に十分効果があるということだ。これまで、散歩というと毎日1時間以上も続けないとあまり意味が無いという風潮だったが、今回の研究で、1日20分でも十分、脳に良い刺激を与えられることが分かっただけに、日常生活にもっと散歩を取り入れる人も増えてくるだろう。筆者の友人にも、犬のトレーニングを兼ねて、毎日1時間以上の散歩を欠かしたことのない者がいるが、最近では時々、散歩中に頭が空白になり一種のハイ状態になると言っていた。数年前に読んだ何かの本で説明されていたが、脳内でβ−エンドルフィンと呼ばれるホルモンの分泌が活発になったためかもしれないな。

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