パースエクスプレスVol.126 2008年7月号

医療問題というのはどの国においても、いつもその話題に事欠かない永遠のテーマであるように思えるが、ここオーストラリアでも、医療問題は常にメディアに登場するトピックの1つである。今回、目にした記事は、末期症状の患者を違法に安楽死(薬物等で死期を早める積極的安楽死)させる手助けをしたことがある医師が、調査した西オーストラリア州(WA州)内の一般開業医の4分の1にも及んでいたという内容だった。安楽死というのは賛否両論、論議を招く複雑なテーマであるが、今回の調査で一体どんなことが判明したのだろうか、ここで簡単に紹介しよう。

 末期症状の患者を見守る医師というのは、複雑な心境に駆られることであろう。痛みに苦しむ患者に、モルヒネのような痛み止めを投与し続け、延命を試みるべきか、早く痛みの苦しみから解放するため、安楽死させるべきなのか。安楽死が法律上で認められている場合は、こういった選択はあるが、ここWA州のように安楽死が認められていない場合は、延命治療を続けるのみとなってしまう。しかし、ここにきて「医師向けの雑誌『メディカル・フォーラム』が最近行った調べによると、調査したWA州内175人の一般開業医の内、その4分の1が末期症状の患者の死を早める措置を施したことがあるのを認めている(7月5日、The West Australian)」という。これが事実であれば、多くの医師が自殺を幇助したことになり、終身刑に直面する可能性もあるということだ。医師としては、患者と家族の意思を受けて行ったことであるとは思うが、現実と法律とのギャップから生じた問題だろう。また同調査では、3分の1の医師が安楽死を認めていることも判明した。メディカル・フォーラム編集部のシェーン・カミングス氏は「医師は基本的に患者を痛みから解放することに焦点を合わせていて、死を早めているわけではないというのが私の見解だが、両者はしばしば混同されてしまう」と述べ、医師の立場を支持している。医師が人間として、患者や家族に対する深い同情から施した行為と判断してはどうだろうか。


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