さて、ここで両国の要求を手短に紹介してみよう。まずは日本側だが、「捕鯨は日本の伝統的な文化であり、他国に色々制限されるのはおかしい。絶滅の危機があるというのなら、科学的に調査をし、問題のない種類の鯨だけを捕獲すればいい。現在、ミンク鯨に絶滅の問題はないため、南極海での調査捕鯨を現行の年間440頭からその倍の880頭までにすることを要求する。また新たにザトウ鯨とナガス鯨という大型鯨の捕獲を開始する。これは南極海の生態系の解明や、鯨資源の管理手法の開発のために、対象種を増やす必要があるためである。」と主張するものだ。
一方、オーストラリア側はというと、「南極海はオーストラリアの領海であり、ここでオーストラリアが保護している鯨類の捕獲は絶対に許さない。またザトウ鯨などの大型種は絶対数が少ないため、絶滅の恐れがある。これらはホウェール・ウォッチング業界の対象となる鯨で、オーストラリア国内に多大の利益をもたらしているため、保護されるべきである。日本の調査捕鯨は科学研究を装った商業捕鯨である。」といった内容だ。しかし、両国の主張する内容には、どちらにも弱点がある。まず日本側が捕獲を要求するザトウ鯨などは、国際的な専門機関によって絶滅の恐れがあるとされている鯨種であるということを反捕鯨国は見逃さないだろう。またオーストラリアは、南極海がオーストラリアの領海であると主張しているが、それを認めているのは4ヶ国のみで、国際的には通用しないということだ。
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