パースエクスプレスVol.113 2007年6月号

オーストラリアが移民の国であるということは、多くの人が知るところである。文化、宗教、生活習慣が異なる様々な人々が同居するということは、バラエティーに富み、興味深いことではあるが、移民が自分たちのやり方を押し通そうとすると、逆に周りから反感を買うこともある。共にオーストラリアという国に住む以上、国民に共通のマナー、常識といったものが必要となるだろう。そしてこういった状況の中、5月30日、オーストラリアの市民権の取得を希望する移民に対して、「市民権テスト」を実施するという法案が議会に提出された。果たしてこのテストは如何なるもので、何を目的としているのだろうか。オーストラリア滞在15年を超えてしまった筆者にも興味ある内容なので、今回、取り上げてみた。 もう10年以上も前(1996年)のことであるが、後にオーストラリアのワン・ネイション党代表となったポーリン・ハンソン議員が議会で主にアジア系移民に対して不快感を示すコメントを発したことが問題となり、国内が一時、騒然となったことがあった。結局、彼女の言いたかったことは、元々のオーストラリアの文化、生活スタイル(英国系ヨーロッパ移民型)を無視し、自分たちの勝手、気ままなやり方を通す移民達にもっとオーストラリアのことを考えてほしい、ということだったと思う。「郷に入りては、郷に従え」という諺があるが、これに近いものを求めていたんだろうな。移民するなら、もっとオーストラリアのことを理解しろ、ということだった。今回、実施がほぼ決定した「市民権テスト」だが、「移民が連邦政府の市民権テストに合格するには、オーストラリアンデー、アンザックデーといった主要日や連邦国家の歴史を学び、オーストラリアの動・植物を識別できることが必要である(5月31日、The Sunday Times onlineより)」とあるように、オーストラリアの基礎知識を学ばせることが目的だろう。今年の9月17日より実施予定のこのテストは、選択肢による20問のテストで、12問正解で合格という。移民の英語能力を試すこともあり、他言語でのテストは無いと言うから、非英語圏からの移民には結構大変だろう。

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