今年も12月に入り、早いものでまたこの1年が終わろうとしている。振り返ってみて、世界中でどうもあまり嬉しいニュースがなかったかのように思えてしまうな。それとも良いニュースが、あまりに多い悲惨なニュースに押し潰されてしまったのだろうか。どうも地球社会全体がネガティブな雰囲気に覆われているようにも感じてしまうが、ちょっと悲観的過ぎるだろうか。さて、ここ最近、オーストラリアのメディアを賑わしていた話題といえば、12月2日、シンガポールで死刑となったオーストラリア人の問題だった。筆者はこれを機に、死刑問題をちょっと調べてみたが、各国様々な考え方があり、なかなか複雑だ。今回はちょっと恐ろしい話だが、この「死刑」について少し考えてみようか。

2002年12月、カンボジアからオーストラリアへ持ち込もうとしたヘロイン395グラムが経由地のシンガポール、チャンギ国際空港で発見され、逮捕されたオーストラリア人、ニューエン・ツォン・ヴァン(25)が12月2日、シンガポールのチャンギ刑務所で死刑となった。死刑確定となってからも、なんとか阻止を試みたオーストラリアであったが、その努力も実らなかった。1985年に死刑が全面的に廃止されたオーストラリア国内では波紋が広がり、ハワード首相もシンガポール、マレーシア、インドネシアといった近国への死刑廃止を押している。麻薬の密輸については特に厳しいシンガポールだけに、多量のヘロインの持ち込みとあっては、極刑を免れるのは難しい。もしこれが死刑を廃止している他国であったならば、命だけは救われただろうが、本人はそのことを認識していたのだろうか。シンガポールでは2001年から2005年9月までに66人のシンガポール人と22人の外国人に対して死刑が執行されている(シンガポール政府発表)が、もしここでオーストラリア人の彼だけが死刑を免れたとしたら、シンガポールは他国との外交に問題を生じさせることになってしまうだろう。シンガポールの冷静な対応がオーストラリア側とは対象的に感じられた。

 

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