ドロップアウトの達人 Vol. 46
 

 彼らの存在が意味しているもの。それは援助というものが、お金だけの問題ではすまないということを物語っているのではないかな。
 もともと、ここにいた人達に強制的に服を着せて、強制的によその文化を押し付けてしまったのだから、それに順応できない人達が出てしまったり、落ちこぼれた人達が出てしまったり、あるいは政府の言う“援助”を逆手にとって、絶対働かないと決め込む人達が出てしまっても、不思議なことではないと思う。
 背広を着て(言い方に語弊があるのなら言い換えるけれども)、例えば身奇麗にして仕事に奉仕する、公に奉仕することによって、通貨という収入を得、それを生活の糧にして生きていく産業革命以来の英国流の社会の形に君の気になったアボリジニ達は、実はとてもついて行けないと思っているのかもしれない。

 例えば、アウトバックに行くと、君にもわかることなのだが、僕達“文明側の人間”は3日ともたずに死んでしまうような自然がそこにある。でも、そういった過酷な自然のなかでも、何万年もの間、アボリジニ達はそれなりに知恵を絞って生活してきたし、うんと離れたよその部族とも、彼らの連絡方法でコミュニケ−ションをしてきたんだ。彼らには、石油で動く機械なんてなかったし、携帯電話やパソコンとも無縁だった。
 そこに白人が来て、抵抗した部族(タスマニア島)は、アメリカインディアンと同じ皆殺しの運命にあい、抵抗しなかった部族で、白人達の居住区から逃げることに失敗した連中は、男は奴隷のような下働き、若い女は娼婦以下のメス(溜まった精液を受け止めるためのトイレの役割)として、白い獣達と共存する以外なかったんだ。

 ところが、ケネディの登場以降、人種差別に対する嫌悪が世界的に高まってきた関係から、この国の偉い人達もそのままアボリジニ達をほっておく訳にいかなくなり、無理やり教育したり、無理やり援助して、自立させようと考えるようになった(傍目に悪いから)。この辺の連中の思考回路は、原爆を落として、日本に真の民主主義を誕生させたと信じている一部の頑固な白人の考えと何もかわらない(同じ例が、アフガンで一昨年あり、イラクで今起きていることなのである)。

 でも、よく周りを注意してみてみると、なにも街中でとぐろを巻いているのはアボリジニだけではない。白人も、いろんな人種も混じっている。だから、制度に適応できない人達は、広い意味ではどこの国にも、どの人種にもたくさんいるはずなのである。それでも、ハワードのような頑固親父の“俺達がこんなに面倒見てやってるのに、あいつらは自立すら出来ていない”風のコメントに接するたびに、言いようのない不快感を感じてしまうのは、僕だけではないはずである。

 「人は生まれ持って、一人一人の内面に“神の王国”を抱えて存在している」と諭したイエスキリストのコメントをもう一度、しっかりかみしめる必要がある。あるいは、「人は成長するにしたがって、川下に向かって旅をすることを選ぶ」とコメントした、シッダールタ(仏陀)のことを考えてもいい。

 僕達は、僕達自身がこの地球上で刻まれる時間という旅の中で、それぞれの希望や、願いや、疑問を抱いたまま、間違いなく全員が100年足らずで死ぬ運命を与えられている。そんな厳粛な事実の中で、逆になぜ、君が彼らに興味を持ったのかな?

 最後に、僕は君の質問に決して好感を持っていないということを、付け加えておく。偉そうなこと言われて腹が立つだろうけれども、その辺のことを質問する前によーく考えておくように。

回答ZORRO

このコーナーでは、皆さんが日常生活において、感じ、思い悩んでいることについてご相談を承ります。是非、パースエクスプレスまでE-mailでお送り下さい。
E-mail: perthexpress@nichigonet.com



This site is developed and maintained by The Perth Express. A.C.N. 058 608 281
Copyright (c) The Perth Express. All Reserved.