其の26　お父さん大忙しの巻

　いやー、よく知人達には「お前さー、色々やってるけど実は暇なの？」とか言われるが、最近本当に忙しいんだよ。実はずーっとこのコラムには書かなかった、というか、他に書くことが多かったんでつい書きそびれちゃったんだけどね、もうすぐ2番目が生まれるのだ！我がひとり息子の恵蘭もついにお兄さんとなる日が来るのだ。

　それにしても、やっぱりお腹大きいのって大変だよねー。一家の女性陣に「あんたねぇ、妊婦の気持ちが分かる？」って突っ込まれて「俺ぁ分かりたかぁねえよっ！」って即答したくらい、やっぱり男には耐えられないだろうな。イヤー、女は強いわ。しかし、テレビのCMとかでさ「わー、赤ちゃんが動いたわ！」「どれどれ、あ、ほんとだ」とかやってるけどさ、出産直前なんてお腹の赤ちゃんのサイズも動き方も半端じゃないから、カミさんのお腹が急に片側にググッと出っ張ったりして、本当にSF映画の世界だよ。「ホラァ、カワイイでしょ」とか言われても、一瞬思い浮かぶ言葉ってやっぱりカワイイというよりは「うわー、腹の中に何かいるぞ」じゃないのかなぁ？しかもその自分以外の生命体（ホントはつながってるけど）に内臓の内側からボコボコ蹴られるなんて、俺にはこの「ささやかに幸せな」感覚をはるかに超えた未知の体験に耐えられるかどうかは、一切自信無いのでよろしく。とか書くと「ヒドーイ、信じられなーい」と言う女性の皆さんの声が手に取るように聞こえてくるが、本当はアンタの旦那だって絶対そう思ってるから聞いてみろ！男の妊娠に対する理解なんてのは所詮そんなもんだ。なにしろ、自らの実体験の可能性、言い換えればそこまで痛い思いする可能性はゼロなんだから。あ、言っとくけど、出産と言うのは夫婦双方にとってもすばらしく神秘的な体験であるので、それを否定してる訳じゃないので勘違いしないでね。

　で、お腹の大きいカミさんには2歳の子供、ましてやエクストラ・ラージサイズの子供が壁に向かってダッシュしたり、ソファーに向かってダイビングするのを止めるのは体力的に相当キツイので、必然的に俺が世話をすることになる。カミさんは当然のことながら椅子から立ち上がることすらキツイ。それは分かっているんだけどな、俺が仕事から帰ってきてぐったりして椅子に座った瞬間に「ほら、お父さんが遊んでくれるからねー」って言われるとさすがに俺も「えぇー？ちょっと待てよぉ」とつい口から出てしまうのをグッと飲みこ......める訳ねえだろ！！「俺だって遊びで会社行ってんじゃねえんだよ！」と、以前ならここからちょっとした小競り合いが始まったのだが、さすがに子供の前でそれはしたくないので、結局2人で、笑顔で遊んであげることになる。それはそれでいいんだけどね。子供かわいいし、カミさん動けないのも分かるし。

　しかしだ！しかしなのだよ！もっとも俺様が不満なことは、俺様が一切自分の体の痛みについて文句を言えないことなのだ。「あー腰痛ぇなあ。昨日重いもの持ったからなあ」とか言おうもんなら、これが新婚カップルだったら「まぁ、大丈夫？マッサージしてあげようか？湿布したほうがいいんじゃない」「いや、これくらいなんつーことないよ」「わぁー、あなたって体力あるのねぇ」「そんなこと言わなくても分かってんだろ。それより、こっちこいよ。ふふふ」「いやーん...？」と、こういうチープなラブラブの会話が成立する訳だが、子供2人目結婚数年目になると「腰が痛い」とか言おうもんなら「ぷっ」とか噴き出されて、こう言われるのがオチだ。「ふふふ、そんなの痛いうちに入らないわよ、出産前の痛みに比べればね！」 お前なあ、それを言われたら俺は何にも言えねえだろうが。そりゃあ「何言ってやがんだ、スパイだった時のこの背中の拷問の傷跡が...」とか「これは熊と素手で戦って噛み付かれた時の...」とかそういうのがあれば違うのかもしれないが、俺様にはそういう必殺技は無い。いや、別に無くてもいいんだけどね。

　話を戻すが、とにかくお腹が大きけりゃ文句の一つも言いたくなるのもしょうがないので、旦那としては何を言われても「ハイハイ、スミマセンねー」と、とりあえず下手にでるしか無いんだよね。カミさんだって妊娠中、特に出産直前はどうしても神経が疲れていて、自分が理不尽なことを言ってるのは十分知ってるんだから、過ぎてしまえばそれもまた笑い話だ。 さあ、旦那諸君！とりあえず謝ろう。