伊達親父の新米父親コラム「父親になった俺様」

 いや、先月は実にグッタリと疲れた月であった。その原因とは、自分の怪我による運動不足や仕事の疲れなどであったのだが、これに一気に追い討ちをかけたのは恵蘭の入院だった。
 可能性が無いとは思わなかったが、カミさんから職場に電話があった時はさすがに驚いたね。小さい子供はまだ体が出来ていないので、入院するともなればやっぱりどんな病気でも心配だ。

 実は、しばらく前からやたらと抱っこをしてほしくて泣きまくってたんだが、不覚にもそういう年頃なのかなーと思って、特に何もしなかった。目に見える症状もなかったしな。でも、その時から既に調子悪かったんだろう。
 ちょっと風邪を引いただけのハズの恵蘭が、やたらと苦しそうに呼吸をする。おかしいと思ったカミさんが救急病院に連れて行くと、診断の結果は「軽い肺炎」。で、とりあえず抗生物質を与えて様子を見ましょうという事になったのだが、これが一向に良くなる気配がない。呼吸は更に浅く速くなり、心配したカミさんがもう一度、恵蘭を病院に連れて行って再検査をした結果、病名はウィルス性の肺炎と毛細気管支炎と診断された。悪性のウィルスじゃなかったのでほっと胸をなでおろしたのだが、それから数日間は入院して治療を受けなければならず、夫婦交代で病院に泊まる事になったのだ。

 さて、泊り込みの看病といえば状況的にはキツい。だが実は俺様はひそかに結構楽しんでたりして。もちろん、看病してる人が目の前で生死の境をさまよっているような状況だったら、全然エンジョイできる訳は無いが、なにしろ個室だったし短い期間だったからな。とにかく怠け者の俺様にしてみれば、ゴロゴロしていてもちゃーんと食事が出てくる状況は天国なのだ。しかも部屋には、ビデオデッキまであったし(共用だったんだけど、結局ウチで独占状態)。確かに夜中の1時間置きの回診はやっぱり目が覚めてしまうので、それだけはちょっと不満だったが、小さめのソファーベッドだって冷たい床に寝るよりは全然マシだ。

 さて、快適な病院生活を過ごす為に俺様が用意したのは、雑誌と文庫本数冊、着替え少々、時代劇ビデオ数本、非常食(カップ麺)、そして車の中にはさらに分厚い国語辞典。さすが快適主義者の準備周到な俺様。
 「見ろ、これで完璧だ」「あんた、その荷物全部自分で持って帰るんでしょーね?」「うっ、うーん...」「うーんじゃないでしょ」と突っ込むカミさんに何も言えずうなだれる俺様。その時、部屋のドアを開ける音がした。「やった!食事おばちゃんだっ!」案の定「ハロー!」と食事のおばちゃん(とは言わないと思うが)が、食事を運んで来る。よっしゃ、早速俺様の出番だ。当然、親の責任として味見は欠かせない仕事なのだ。
 「なあ、なんでデザート3種類も頼んだの?」「いや、どれ食べるかわかんないから...」 うむ、さすが俺様のカミさんだ。確かに、子供は具合が悪いときは極端に食べなくなるものなのだ。

 ところが、このかなりまともな食事を前にして、ケイランが苦しくなり、またもやご機嫌斜めになり始めるので、早速カミさんと2人で恵蘭をつれてラウンジを軽くお散歩して帰る…、飯が無いっ!恵蘭のディナーがぁっ!俺のディナーがぁっ!おばちゃん、終わりだと思って下げたのか?あああああ、一生の不覚っ!まだ俺ちょっとしか手をつけてないんだぞ!恵蘭なんか一口だぞ!デザート触ってもいないんだぞ!
 「お、おい!た、大変だ!大変なんだよ!」
 「ちょっと、何かあったの?どうしたのよ」
 「メシが無い...デ、デザート...くすんくすん」
 カミさん、一瞬固まった後に、
 「...アンタ...恥ずかしくないの?ホントに馬鹿じゃないの?」
と、呆れ顔で後ろからハンマーでぶん殴るようなコメントをくれる。しかし「朝昼晩3食カレーで生きて行けるお前とは違うんだよ」とは、やはり口が裂けても言えず、
 「でもなあ、お前、入院生活の唯一にして、最大の楽しみといえば食事だぞ?もったいないじゃないか。ケイランだって後で食べるかもしれないし」 と気弱な反論を試みる俺様。
 「アンタねえ、アイスクリームとゼリーがどうやったら冷蔵庫も無いのに3時間以上もつわけ?」
 涙ぐむ俺様。黙ってビデオのスイッチを入れるカミさん。泣き叫んで母親から離れない超機嫌の悪い恵蘭。これって家庭のピンチなのか?(次号に続く)




★「とびひ」ってご存知ですか?正式には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)といいます。英語では“impetigo contagiosum”、通称“school sore”。直訳すると「学校傷」って意味がイマイチわかりませんが、クラスで一気に感染する事が多いからだと思われます。名前は知っていても実際に患部を見た事がない親も多く、子供が感染していても気がつくのが遅れる場合が意外と多いそうです。抗菌剤や抗生物質の投与等の治療をすればすぐに治りますので、他の子供にうつしたり慢性になる前にすぐに病院へ。





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