パースエクスプレス Vol.220 2016年5月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第49回目は、「いびき」についてです。
いびきとは、寝ている間に上気道が狭くなり、空気が通る時に振動して鳴る音です。一般的に年齢を問わず、多くの人がいびきをかきますが、女性よりは男性、中年世代により多くなります。いびきをかく人の10%は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea)が原因であり、突然死など命にかかわるリスクもあると言われています。
いびきの原因には、次のようなものが挙げられます。
・肥満
・アルコール飲用(睡眠中に筋肉の緊張を緩めてしまう作用が
あるため)
・鼻づまり
・仰向けに寝る姿勢は舌が落ち込んで、気道を塞いでしまう
・鼻ポリープ、舌肥大、甲状腺腫脹などは上気道を狭くしてしまう
・アデノイド、扁桃腺肥大(特に子どものいびきの原 因で多い)
・アレルギー性鼻炎、花粉症、喫煙
・遺伝的素因(あごや気道、顔や鼻などの解剖学的特徴)
・薬の服用(睡眠薬や鎮痛剤、経口ステロイド、てんかんなどの薬は
のどの筋肉の緊張を緩めてしまう作用があるため)
睡眠中にいびきをかく人は大勢いますが、実際にドクターに相談する方は全体の約5%以下だと言われています。睡眠をとっているのにもかかわらず、日中だるい、眠気がするなどと何か問題が生じているのであればドクターに相談しましょう。もし寝室を共にしていて、いびきの状況をわかっている家族がいるのであれば、できれば受診時に同行してもらうとドクターの診断の助けになります。
ドクターの診察の結果、深刻な睡眠時無呼吸症候群がないかどうか調べる必要があれば、専門医が紹介されます。たいてい専門医の診察の後、必要に応じて、その特殊なSleep Centre(睡眠外来)の個室に一晩泊まり、寝ている間のいびきや呼吸状態などをモニターし、診断がなされます。
いびきの治療は、その原因にもよります。仰向けに寝ない、体重を減らす、アルコールやタバコを避けるなどの簡単なことで改善が見られるかもしれません。ただし、それでも変わらないようであれば、ドクターによる受診が必要となります。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん