パースエクスプレス Vol.217 2016年2月号 掲載
当地オーストラリアにて、一般読者からの医療についての質問に専門家がお答えするこのコーナー。第46回目は、「マイボーム腺腫」についてです。
一般的に日本で言われる “めいぼ”が「マイボーム腺腫」と呼ばれ、英語で「Meibomian Cyst」または「Chalazion」と言われます。日本での病名は、霰粒腫(さんりゅうしゅ)となり、目の淵にプクッと膨らみができます。また、こちらも日本で言われる“ものもらい”や“めばちこ”は、麦粒腫(ばくりゅうしゅ<英:Stye>)を指すことが多いでしょう。
目の淵には、脂肪を分泌するツァイス腺(睫毛脂腺)、汗を分泌するモル腺(睫毛汗腺)、涙に油分を補うマイボーム腺といった様々な腺がありますが、このマイボーム腺が詰まって膨らんだものがマイボーム腺腫(霰粒腫)というもので、腺の入り口が詰まって中に脂肪分が溜まってしまう状態を言います。細菌感染はなく、たいていは痛みもありませんが、麦粒腫より膨らみが大きく、詰まりが取れてなくなるまでに数ヶ月かかることも珍しくありません。これに対して細菌感染を起こし、圧痛を伴う赤い膨らみがあるのが麦粒腫です。麦粒腫は細菌感染が原因ですので、抗生物質の点眼や内服で、たいてい1週間以内にはよくなります。
日本では、わりとマイボーム腺腫の切開処置も勧められるようですが、オーストラリアではなるべく自然治癒を勧める傾向です。詰まった腺を開き、中に溜まっている脂肪分を排出させる目的で、時間はかかりますが地道にまず毎日5~6回、火傷しない程度の熱さのお湯につけた小さなタオルをマイボーム腺腫のできているまぶたに5分~10分程あてます。そして、手洗いをした後、指の腹でマイボーム腺腫がまぶたの上にできている場合は上から下へ、あるいは下にできている場合は下から上に、まぶたから目の淵に向かって軽く押し出すように、優しくマッサージを数回繰り返します。これを続けることで、詰まりが取れればなくなります。これでも改善せずに大きくなり続ける時には、切開処置をすることも考えられます。
ご質問にもありましたが、最近マイボーム腺腫や麦粒腫が若い女性の間で増えており、マスカラやつけまつげが原因とも言われています。マスカラは中で菌が増殖し、細菌感染の原因となりますので、残っていても数ヶ月毎に新しいものを使った方がよいでしょう。また、つけまつげの接着剤は目の淵に付着し、腺を塞いでしまいます。マイボーム腺腫や麦粒腫を繰り返す人は、つけまつげをしばらく止めるか、接着剤を変えるなどした方がいいでしょう。
回答者:日本語医療センター
マネージャー 千綿 真美さん